4月28日、リオ州知事だったウィルソン・ヴィッツェル氏が知事罷免処分を受けた。しかも、罷免特別裁判での投票0-10の屈辱的なものだった。
リオ州地裁判事から「汚職撲滅」を叫んで知事選に出馬し当選。一時は22年大統領選さえ目指していた同氏にとっては、みじめなくらいの屈辱だった。
それにしても返す返す思い出されるのは、知事当選前の「あの一幕」だ。それは、2018年9月30日、リオ市内で行われたリオ州議候補ロドリゴ・アモリム氏の街頭演説の時のことだ。
この演説で左派政党批判を展開したアモリム氏は、この年の3月14日に自動車で移動中に殺害されたマリエレ・フランコ元リオ市議の死を追悼して作られた記念のネームプレートを応援演説者とたたき割る行為を行った。
そのときに右隣にいて一緒に叩き割ったのがダニエル・シルヴァイラ下議候補、左側でマイクを片手に聴衆を煽ったのがヴィッツェル州知事候補だった。
ボルソナロ氏の黒いTシャツを着たアモリム氏の両脇にいたシルヴェイラ氏、ヴィッツェル氏は共に、黄色地に緑色で「わが政党はブラジル」と書かれたTシャツを着ていた。
それから約2年半後、彼らがどういう運命を辿ったかは、よく知られるところだ。下議となったシルヴェイラ氏は、ボルソナロ派下議としてリオ市内の学校への無許可侵入や所属政党幹部への盗聴など数々の問題行為を繰り返した。
そのあげく今年の2月16日、最高裁判事の全員更迭と、軍政時代の軍政令第5条(AI5)を擁護する発言を録画しネット投稿。「体制を揺るがす危険行為」として現行犯逮捕された。2カ月を経た現在も自宅軟禁が続き、この件で被告となった。下院に味方も少なく、罷免は避けられないと見る向きが多い。
そして「汚職撲滅」を掲げて知事当選したはずのヴィッツェル氏は、コロナ禍での保健局の医療機器売買に関して自ら収賄を行った容疑が浮上。それが仇となって罷免となった。
この2人の件に関し、ネット上では「マリエレの呪いか?」という人が少なくないが、無理もあるまい。もうひとりのアモリム氏も、以前につとめたリオ州内での市で幽霊職員をつとめていた疑惑で捜査対象になっており、もしかしたらこれも時間の問題かもしれない。
このネームプレート叩き割り事件に関しては、発覚当時から問題視されていたものの、彼らが3人とも当選していたため、彼ら側の主張を信じて投票していた人たちもそれなりにいたはず。もう、今となっては、虚しいばかりだが。
もっともこれが本当に「マリエレの呪い」なのだとしたら、果たしてそれはここまででとどまるか。マリエレ氏に対して攻撃的な言動をしていたボルソナロ支持派はこれだけでなかったはずだが。(陽)
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