最高裁が12日、特許申請から20年を過ぎた医薬品やワクチンに関する特許を無効化する判決を下したと12、13日付現地サイトが報じた。
医薬品やワクチンの特許無効化(quebra de patentes)は、ジェネリックの薬やワクチンの製造を希望する製薬会社などが常に求めている。今回の判決は、既に裁判が起きている保健衛生関連の特許3345件には遡って適用されるが、それ以外の分野で自動更新された特許2万7203件は適用外となる。
今回の判決は、ジアス・トフォリ判事が4月7日に出した医薬品やワクチン、医療機器に関する特許の延長(更新)を認めないという仮判決を認めるもので、判事投票8対3で承認された。判決は判決文公表と同時に発効となる。
医薬品やワクチンに関する特許は、国立工業所有権院(INPI)が承認後に登録される。特許の保護期間は15~20年だが、現行法では審査の遅れなどを補う意味で最大10年間の更新が認められている。今回の判決では特許権は申請日から最大20年間有効で、更新は認められない。
最高裁は先週、審査の遅れを補うための特許更新に違憲判決を下しており、今回の審理で反対票を投じた3判事も、特許無効化は全ての特許に遡って適用すべきという意味の反対だった。
対象の医薬品には肝炎や糖尿病の治療薬などが含まれ、判決を歓迎する向きが多い。だが、一部の製薬会社は、医薬品などへの開発投資の減少や法的な安全性が揺らぐ事への懸念を表明している。
ただし、新型コロナのパンデミックという特異な状況下ではなおさら、医薬品やワクチン、医療機器に関する特許の存在は大きい。多くの国は、コロナ対策用の医薬品や医療機器のより廉価な供給を可能とする特許無効化を待ち望んでいる。
その一例は、世界貿易機関(WTO)に新型コロナワクチンの特許無効化を要請したボリビアだ。WTOが13日に明らかにしたところによれば、同国はジョンソン&ジョンソン(J&J)のワクチン1500万回分の購入を望んでいる。
同国は、貿易における知的所有権に関する合意(TRIPS)との関連で特許の無効化を要請した。これが通れば、J&Jのワクチンは他国や他の工場でも製造できるようになり、合法的な方法かつ現行価格よりも低価格で同社のワクチンを購入できるようになる。
WTOはここ7カ月間、インドや南アフリカなどからも同様の働きかけを受けてきたが、正式な要請提出はボリビアが最初だという。コロナワクチンに関する特許権差し止めは米国政府も支援する姿勢を見せており、ブラジルでも賛同する声が上がっている。
ブラジルではオズワルド・クルス財団(Fiocruz)にオックスフォード・ワクチンの有効成分(IFA)の国内生産が認められているが、始まっていない。IFAを中国から輸入しているブタンタン研究所は、中国からのIFAの輸出が遅れ、15日からワクチンの製造を中止する必要に駆られている。
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