ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》コーヴァス・サンパウロ市市長死去=祖父同様、任期中に癌で=PSDB内で大激震走る=後任市長はヌーネス氏に

《ブラジル》コーヴァス・サンパウロ市市長死去=祖父同様、任期中に癌で=PSDB内で大激震走る=後任市長はヌーネス氏に

コーヴァス氏(Governo Do Estado De Sao Paulo)

 16日朝、サンパウロ市シリオ・リバネス病院に入院していたブルーノ・コーヴァス・サンパウロ市市長(民主社会党・PSDB)が、癌のため41歳の若さで亡くなった。任期を3年半残しての逝去で、後任には副市長だったリカルド・ヌーネス氏(民主運動・MDB)が就任する。党設立者のマリオ・コーヴァス氏の孫で、政局調整力にも長けたブルーノ氏の死は、PSDB内でも激震を招いている。16、17日付現地紙、サイトが報じている。


 ブルーノ・コーヴァス氏は1980年4月7日にサンパウロ州サントス市で生まれた。祖父は後にサンパウロ市市長(1983〜85年)、サンパウロ州知事(1995〜2001年)となったマリオ氏だった。マリオ氏は1988年、所属していた民主運動(MDB)を離党し、民主社会党(PSDB)を結党。1989年の民政復帰後の大統領選には同党候補として出馬していた。
 ブルーノ氏はサンパウロ総合大学やサンパウロ州カトリック大学に通うかたわら、98年にPSDBに入党。99年に党青年部長となった。最初の選挙は24歳の時で、落選はしたものの、サントス市長選に副候補として出馬した。26歳の2006年にサンパウロ州議に最多得票で当選して2期つとめて、政治家としての道を本格的に歩み始めた。
 2期目の2011年にジェラルド・アウキミン聖州知事政権で環境局長をつとめ、14年には下議に当選した。
 順調に出世する中、2016年のサンパウロ市市長選でジョアン・ドリア氏の副候補として当選。18年4月には知事選出馬のドリア氏に代わり、30代の史上最年少でサンパウロ市市長となった。
 だが、19年10月、皮膚の感染症を患い、治癒後の検査を行った結果、胃と食道部分をつなぐ部分に癌が見つかった。これ以降は癌との闘病を続けながら職務を行い、20年の市長選でも再選していた。

 だが、今年の4月に検査入院したところ、癌が肝臓や骨に転移していることが判明。5月2日からは休職して治療につとめたが、胃の病巣部からの出血などで体力がそがれ、14日には医師団が「回復不能」と発表。16日午前8時40分に死去が発表された。祖父マリオ氏も2001年3月、サンパウロ州知事の任期中に癌で逝去していた。
 ブルーノ氏の死後、PSDBのブルーノ・アラウージョ党首は、「党にとっての最も輝かしい未来と指導力を失ってしまった」と悲しみの発言を行った。コーヴァス氏は党創設者のマリオ氏の打ち出した社会民主主義路線の後継者として見られていただけでなく、「ブラジルが直面している諸問題を解決し、ブラジルを変える唯一の方法は善政を行うこと」という主張や、党派を問わず、対話を貫く姿勢が高く評価されていた。
 その早い出世で、ボルソナロ大統領の極右路線と、ルーラ元大統領の左派の間の「第三の選択肢」のリーダーとなると目されていた。そのため、同氏の死後、党内の権力争いを懸念する声も上がっている。
 サンパウロ市市長の後任はリカルド・ヌーネス氏となるが、サンパウロ市の保育園の入園待ち問題解決への貢献で知られつつも、カトリック保守派にも関わらず、家庭内暴力で訴えられた過去もあるなどの不安要素もあり、政局調整力など未知数の部分も多い。
 同氏は15日も、「与えられた任務を果たすことが、ブルーノ氏への顕彰にもつながる」として、ブルーノ氏に代わって予定通りのイベントに参加。後任市長としての初日の17日は、持病のある妊婦へのコロナワクチンの接種立ち合いではじめた。
 ブルーノ氏の葬式は16日昼過ぎにサンパウロ市市庁舎のメモリアル・ホールで行われた。遺体はその後、郷里のサントス市に運ばれ、午後6時前にマリオ氏と同じ墓地に埋葬された。
 ドリア・サンパウロ州知事はじめ、ボルソナロ大統領やルーラ、ジルマ、カルドーゾ、コーロルらの歴代元大統領や、昨年の市長選で争ったボウロス氏などから、15歳のトーマス君をはじめとする遺族への慰めを求める声や弔辞が寄せられた。

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 15日はボルソナロ大統領を支持するデモが、本人が参加した大統領府前のもののほかにサンパウロ市でも行われたが、ブルーノ・コーヴァス市長が亡くなった直後ということもあってか、閑散とした状況。そんな中、演壇にいた大統領支持者のはずの人が拡声器を手に持って、「フォーラ(やめろ)、ボルソナロ」と裏切りの叫びを行ったのがネット上で話題を呼んだ。支持率急落の伝えられる大統領だが、その傾向はデモの場でも象徴的に現れたか。
     ◎
 新たな任期がはじまったばかりの現職市長を癌で失なってしまったサンパウロ市。コロナ対策をはじめ、これまでに進められていた市政はどうなってしまうのかと、不安な人も少なくないのでは。任期の残り3年半強はリカルド・ヌーネス氏による市政となる。これまでほとんど語られてこなかった人だけに、どんな政治になるかは未知数だが、見守りたいところだ。

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