「これ、フル代表より強いんじゃないか?」。14日にサッカーのW杯南米予選出場のフル代表と、五輪候補の代表が同時発表された際に、こういう声がネット上ではよく聞かれた。
お世辞ではなく、たしかにすごいメンバーだ。フォワードのロドリゴ(レアル・マドリッド)やマルチネッリ(アーセナル)、アントニー(アヤックス)は欧州サッカーに注目している人なら日本のファンにも知られている名前だ。
それに、ミッドフィールダーのブルーノ・ギマリャンエス(リヨン)、右サイドバックのエメルソン(ベティス)、センターバックのガブリエル(アーセナル)、ルイス・フェリペ(ラツィオ)、イバニェス(ASローマ)も世界的ビッグクラブのレギュラー。
加えて、国内選手に目を向けるとジェルソンは2年連続国内チャンピオン、フラメンゴの不動のボランチだし、司令塔役を期待されているクラウジーニョ(ブラガンチーノ)は、昨年のブラジル国内リーグの新人賞にして得点王にまで輝いた、国内で最も期待されている選手だ。
コラム子は五輪代表には2012年のロンドン五輪から注目している。12年にはネイマールやオスカール、16年にもガブリエル・ジェズスやガビゴルと、その後に有名になった選手は輩出してきてはいるが、あらゆるポジションにここまで現時点でスター軍団と呼べる選手がそろったのを見るのは初めてだ。
こうなった背景には、昨年開催されるはずだった東京五輪が延期され、その分、通常「23歳」が上限とされる選手が24歳までに上がったこともある。だが、今回の五輪代表がすごいのは、これがベストの布陣では必ずしもないことだ。
フル代表にも、まだ24歳のジェズスをはじめ、リシャルリソン、ヴィニシウス・ジュニオル、パケタ、ドウグラス・ルイス、レナン・ロディ、ミリトンと、7人も五輪出場対象年齢の選手がいる。うち4人は、本来の五輪対象の23歳以下だ。若手の層の厚さはこうしたところでも明らかだ。
ここまでの若手育成が出来たのは、ひとえにブラジル内の10代育成が上手くいったことの成果だろう。2014年の、あの自国開催のW杯でのドイツでの1−7の屈辱敗戦からの国内指導者たちの立て直しの跡を見るかのようだ。
現状のメンバーなら、対象年齢以外の選手である「オーバーエイジ枠」を使う必要がないほど。せいぜい、まだ世界規模の選手がいないキーパーに使えばそれで済む気がする。
つまるところ最も問題なのは「東京五輪が開催されるか」、ズバリその点だ。変異株への対処ができないまま、ワクチン接種率もわずか3%で、現在、国の内外で開催時の安全を不安視する声が広がっている。「夢のブラジル五輪代表」が幻で終わるか終わらないかは、ひとえに日本の運営努力にかかっている。(陽)