「それにしても、狙いが見えない」。23日、ボルソナロ大統領がリオで、1万人ほどの支持者を引き連れてバイクでデモ行進したのを見て、コラム子はそう思わざるをえなかった。
この行為をハリウッドのアクション映画風に言うなら「地獄のドライブ」「ゴースト・ライダーズ」といった趣きなのだが、支持者たちも含め、彼らは一体この行為で、誰に何をアピールしたいのか。それがさっぱりわからないのだ。
現在、ボルソナロ氏の大統領選における支持率は20%前半。ラヴァ・ジャット作戦での裁判が無効になったことで、大統領選への期待値が一気に高まり40%台にまで達しているルーラ氏に大きく水をあけられている。
加えて現在、上院でコロナ禍に関しての議会調査委員会(CPI)も行われ、クロロキンに奔走しワクチン計画の足を引っ張る行動を行っていたことも晒されている最中。支持率のさらなる降下の可能性も否定できない。
そんな中、「ルーラ氏に対抗するには、彼の主張とは正反対のことで支持者を獲得しないといけない」とでもボルソナロ氏は考えているのかもしれない。
だが、「死者50万人台」の可能性が現実味を帯び、今や国民の91%が「ワクチンを接種したい」と希望する今となっては、こうしたドライブを行ってみたところで「それでこそミット(伝説の男。大統領のあだ名)!」と共感する人が多いはずもない。実際、23日の行進のあとの国民の多くの反応も「唖然」といった感じで、罷免を求める声も以前に増して増えている。
ボルソナロ信者に関しては、これまでも同氏があえて国民を挑発するような言動をしたときの方が支持率が安定する傾向があるので、そのファン心理を読み難いところがある。だが、国民がコロナ禍の惨状に嘆き悲しんでいる現在、その心の傷に薬でなく、泥で汚すような行為が効果を発揮するとは思えないのだが。
コラム子が密かに心配しているのは、2018年9月の「あの事件」の再来だ。ミナス・ジェライス州での大統領選キャンペーンでのボルソナロ氏の刺傷事件のことだ。
あのときも、ボルソナロ氏がカメラの三脚をマシンガンに見立てて撃つポーズが物議を醸した数日後に起きた。現在、同氏に対するアンチのイライラの高まり方が、なんとなくあのときと似ていると感じる。
刺傷事件の「容疑者の射撃練習時に大統領次男が同じ敷地にいた」「被害者であるはずの大統領が、精神異常の判断で済まされた容疑者への責任追及にこだわらない」など、不可解な経緯が指摘されている。
それゆえ「狂言説」もいまだに根強く唱える人も少なくないあの事件だが、あのおかげで爆発的に同情票が集まったのは事実だ。「まさか自身への嫌悪を今のうちに煽って、あのときの再現を狙って土壇場で逆転を・・」という推理は考えすぎだろうか。(陽)
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