サンパウロ市のブタンタン研究所が5月30日、サンパウロ州セラーナ市で行った新型コロナワクチンの集団接種実験により、死者は95%減、発症者も80%減など目覚しい結果が出たと5月30、31日付現地サイトが報じた。
サンパウロ市から315キロのセラーナ市は州の中でも新型コロナの感染率が高いリベイロン・プレット地方にある、人口4万5千人の町だ。同市では2~4月に「S計画」と呼ばれる実験的集団接種が行われ、18歳以上の住民2万7160人がコロナバックの接種を2度受けた。
S計画はブタンタン研究所とサンパウロ総合大学(USP)、セラーナ市役所の協賛で行われたもので、市内を四つのグループに分け、2月17日から4月11日にかけて順次接種を行った。
研究者達は4グループ全ての感染率、死亡率などをグループ毎とグループ間で比較、検討しており、その結果を5月30日にメディアが報じた。
それによると、集団接種を進める内、4グループ中3グループの接種を終えた時点で目に見える形の効果が見え始めたという。
換言すれば、住民の75%がワクチン接種を受けると集団免疫の状態ができ、感染者が出ても他者への感染が減り、感染拡大が起こりにくくなる事が確認された。
この事は、1月17日のコロナワクチンの緊急使用許可後も、有効成分が途絶えて生産が停止したりした事も含めたワクチン不足で接種が滞ったりしているブラジルの現状に警鐘を鳴らしている。
同市での集団接種完了は4月11日だが、2度目の接種が進んだ事の効果は3月、4月の感染者や死者数でも明らかだ。この時期のサンパウロ州は感染者や死者が急増中だった。
だが、同市の新型コロナ感染症患者は3月699人、4月251人で、死者も20人から6人に減った。また、集団接種の期間中に生じた重症患者46人は接種が原因ではないという。集団接種終了後に限定すると、死者は95%、感染(発症)者は80%、入院患者は86%減った。
ブラジル初の実験的集団接種によって成人人口の97%がワクチン接種を受けた事で、同市市民の生活は大きく変わった。
パンデミックが始まってからは、感染が怖く、フェスタでポップコーンを売る事ができなくなっていたという男性は、商売再開を考え始めるなど、市内の経済活動は正常化しつつある。
他方、周囲の市は感染率や死亡率が依然として高い上、ロックダウンを採用するところさえ出ているため、周辺の市で働く人が多いセラーナ市も、パンデミック前の状態には戻りきらないし、予防対策継続が必要だ。
だが、集団接種後は、同市に移転してくる企業や周辺の市にあるが同市在住者を好んで採用する企業も出てきており、数カ月の内に雇用が増えると見る企業家もいる。
これらの傾向も、経済の専門家や企業家が「予防接種が現状を乗り切る鍵」という言葉を裏づけるものといえそうだ。
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コロナ第3波に備え、サンパウロ州でも今一度、より厳しい規制を採用してコロナ対策に乗り出す自治体が増えている。サントアンドレ市とサンベルナルド・ド・カンポ市では5月31日から、22時から翌朝4時の外出禁止令を導入。サントアンドレ市のパウロ・セーラ市長が5月26日に語ったところによると、この1週間で市内の病院の集中治療室の占有率が20%以上あがったとか。とりわけ今は、インドからの変異株が入ってくる恐れも出てきている。気を引き締めたいところ。
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