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大統領は経済重視と言うけれど

ファイザー社のワクチンを搭載してヴィラコポス空港に到着した航空機(1日夜、Divulgacao/MInisterio da Saude)

ファイザー社のワクチンを搭載してヴィラコポス空港に到着した航空機(1日夜、Divulgacao/MInisterio da Saude)

 新型コロナの初の感染者確認から462日目、ワクチン接種開始からも4カ月半近い1日、第1四半期の国内総生産(GDP)が昨年同期を1%超えたと報じられた。
 昨年第1四半期は既に感染者と死者も出ていたから、本当はこの時点でもコロナの影響は出ていたのだが、コロナ禍の中での初の昨年同期超えはやはり喜ぶべきだろう。
 他方、連邦政府が本気で感染抑制に取り組んでいれば経済の回復はもっと早かったのにと思える情報も続いている。
 その一つは予防接種に関係するものだ。上院のコロナ禍議会調査委員会での証言からは、連邦政府がコロナバックやファイザー社のワクチンの国内での適用を遅らせた事が明らかになった。ブタンタン研究所が契約締結かとぬか喜びした事や、ファイザー社の提案が数カ月無視された事は広く報じられた。
 他方、サンパウロ州セラーナ市での実験的集団接種では成人の75%まで接種が進んだ時点で明確な差が表れ始め、死者は95%も減った。また、同市周辺の企業が、感染を広げたり、感染で重症化する可能性が減った人達を雇用したがっている事なども報じられた。
 これらの情報は、ブラジルはもっと早い段階で予防接種実施が可能だった事や、死者増を抑制できた事、経済回復がもっと早かった可能性を示す。2日付エスタード紙などでは、新型コロナと積極的に取り組んだ国はGDPも成長しており、伯国のランキングは19位に転落とも報じている。
 さらに加えたいのは、ボルソナロ大統領が否定したがるロックダウンなどの社会隔離政策の効果だ。サンパウロ州で初めてロックダウンを採用したアララクアラ市は、周囲の市で感染拡大が広がる間も感染者や死者の減少と病床占有率の低下を記録。つい先日、同様の厳しい外出規制を敷いたバタタイス市も、入院待ちの人が皆無となった。
 だが、思い切った規制採用を避け、中途半端な状態で規制緩和と強化を繰り返したところでは、安定した経済活動復活が困難で100年以上の伝統を持つパン屋が閉店といった話も出ている。100年前のスペイン風邪流行時も同様の事実が確認されていた。
 だが、大統領は常に、経済活動継続のために規制緩和を説き、予防接種にも反対した。彼に従っていれば変異株や死者はもっと増え、経済回復もより遅れていた事を多くの事実が示している。(み)


★2021年6月2日《ブラジル》第1四半期にGDPが1・2%成長=感染第2波が進む中でも=庶民の実感とは程遠く
★2021年2月11日《記者コラム》イスラエル並に迅速な予防接種を!
★2021年6月1日《サンパウロ州》集団接種で死者95%に激減=セラーナ市の実験で効果歴然=周囲では感染増が続く中
★2020年4月2日外出規制は経済回復を早める=米国の例が大統領の弁の反証に
★2021年1月1日【2021年新年号】《記者コラム》コロナ禍の大被害は避けられたか=挙国一致で取り組めないブラジル=ワクチン完成しても安心できない?
★2021年4月9日《ブラジル》大統領がワクチン接種加速化を約束=企業家たちとの晩餐会で=「財界との信頼回復」のため=接種状況は収束には程遠いが