ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》鍋叩きの中、大統領がテレビ演説=「年内に全員接種」約束=外出規制批判は変わらず=GDPの4%超えも宣言

《ブラジル》鍋叩きの中、大統領がテレビ演説=「年内に全員接種」約束=外出規制批判は変わらず=GDPの4%超えも宣言

テレビ演説するボルソナロ大統領(Anderson Riedel)

 ボルソナロ大統領は2日午後8時30分に、テレビとラジオを通じて演説放送を行った。国民からの強い反発が沸き起こる中、大統領は全国民へのコロナワクチンの接種を約束したが、同時にコロナ対策での社会的隔離をこれまで通りに批判した。また、2021年の国内総生産(GDP)があがることを政権のアピール・ポイントにもした。3日付現地紙が報じている。
 5月の世論調査で支持率が24%に落ちた上、5月29日には全国規模で反大統領デモが起こった4日後の2日、ボルソナロ大統領はテレビ演説を行った。国民の反応は厳しいもので、放送がはじまった途端、全国で一斉にパネラッソ(鍋叩きデモ)が行われた。そのときの様子は動画に記録され、ネットで大量に拡散されている。
 そんな中、大統領は放送の中で「現在、ブラジルは世界第4位の接種国だ」と語り、「年内までのワクチン接種の完了」を国民に約束した。2日現在、2回目の接種まで終えた人は国民の10・4%に過ぎない。
 大統領はさらに、オズワルド・クルス財団(Fiocruz)が1日にアストラ・ゼネカ社との間でコロナワクチンの有効成分(IFA)の製造技術の移管契約を交わし、IFAを国内生産できるようになることを伝えた。これまでは、IFAの生産国であった中国からの輸入の遅れがワクチンの生産・配布の遅れにつながっていた。Fiocruzは10月にはIFAも含めた100%国産のワクチンの納入が可能と主張している。

 大統領がコロナワクチンに関して、このような発言を行った背景には、5月以降、上院のコロナ禍に関する議会調査委員会(CPI)において、大統領自身がワクチンの契約交渉を半年以上にわたって遅延させ続けていたことを示す証言が次々とあがっていることがある。
 テレビ演説の直前には、サンパウロ州のドリア知事が、初回接種は10月までに終わらせると発表しており、連邦政府としての見解を明らかにする必要にも駆られていた。
 だが、2日も全国での新規感染者が9万5601人、死者は2507人を記録している最中だというのに、「連邦政府は家にいることを強要しないし、商店も、学校も、教会も閉めない」と語り、相変わらず外出自粛規制に反対であることを強調した。
 そして、自らブラジル開催を後押ししたと言われているサッカーのコパ・アメリカに対しても、「リベルタドーレス杯やW杯南米予選で義務付けられている規定を守って開催していきたい」と語った。
 大統領はさらに、経済関係の話にも触れ、緊急支援金の支給が実施されていることなどに言及した上で、2021年のGDP成長率は「4%を超える」と宣言した。
 21年の緊急支援金は20年より減額され、受給対象者も少ないなど、評判が悪く、デモの際も、国民からの批判の的の一つとなっている。
 GDPの4%超えは、1日に発表された第1四半期のGDPが予想を上回る1・2%の成長を見たことを受けて出てきた強気の見解だ。それまでの経済省の予測では3・5%増、5月31日発表の中央銀行の「フォーカス」では3・96%の成長と予測されていたが、1日の発表後は、ゲデス経済相まで「4・5%もあり」と発言していた。