この数年、日本や韓国でブームの「苔テラリウム」の専門店『フローリア(FLORIA Gaden & Flower)』(Rua Guarani, 266-1° andar, Bom Retiro)が、昨年12月に聖市ボン・ヘチーロ地区でオープンした。SNSを通じて商品の存在が知られるようになり、クリスマスや母の日をはじめ、個人のプレゼントへも注文が相次いでいる。外出自粛が続く中でも、インテリアとして楽しめる癒やしの観葉植物として注目されそうだ。
“東アジアの今”である苔テラリウムをサンパウロに初めてもたらしたのが、同店のオーナー、イェオン・ボラさん(40、韓国ソウル出身、通称リアさん)。
「コロナ禍の真っただ中で店を開く勇気なんてありませんでした。それでも、クリスマスや母の日もあり、店はどこにあるのかと尋ねられることが多くなり、思い切って店舗を持ちました」
苔テラリウム(=クローズ式テラリウム)とは、ガラス容器の中で育てる「コケの森」のようなもの。居間や仕事机にも置ける癒しのインテリアといえる。
フタ付きの透明容器に苔などの植物を入れ、密閉して一定の湿度を保ち、室内装飾として植物を育てる。大小様々な容器に、デザイン性のある土や砂を敷き、苔だけでなく、湿気に強い植物も植えられる。
水やりは2、3週間に1回、スプレーで湿らせる程度。空気の入れ替えは、数日に1回5分程度。忙しい人にも手間がかからない。一個一個に「家族」「愛」「カーニバル」といったテーマを設け、小さな人形などの置物を飾るのも苔テラリウムの醍醐味だ。
リアさんは、韓国で学生時代はポルトガル語を専攻。それを極めたいとの思いから、韓国企業で就職していたが、心機一転して2007年に来伯した。やはり韓国移民の夫と出会い、結婚して聖市で暮らし始めた。
これまで夫婦でグラフィックデザインと出版会社を経営し、装飾デザインの仕事が好きなことから、19年に韓国へ一時帰国した時、苔テラリウム創作の講座を受講し、資格を取得した。
昨年6月から自宅で本格的に苔テラリウムを制作し、販売を開始。インスタグラムで作品を紹介すると、それを見たブラジル人のお客さんから注文が増加した。オーダーメイドのため、個々のお客さんに合わせて、日夜、素材の買い付けと手作業にこの一年は費やしてきた。昨年6月から今年5月まで、注文を受けて販売した作品は約500個。猫の手を借りたい時もある。
「ブラジルという環境での苔テラリウムの創作であり、ガラス容器の品質などが一定しておらず、手探りで日々勉強中です。それでも、お客様に喜んでいただけるのが、何よりも嬉しい」
3児の育児をしながら、苔テラリウムのブラジルの火付け役となったリアさん。今後は苔テラリウム教室も開きたいとの夢を描く。コロナ禍の制限がある中で、明るい未来の訪れを予感させてくれる女性のパワーに期待が高まる。(大浦智子さん取材)