ボルソナロ大統領も遂に年内接種を約束するなど、ブラジルでは新型コロナのワクチン接種に対する期待や圧力が高まっている。その一方で、初回接種を受けた事で安心して出歩く人や、1回で十分と考えて2度目を受けていない人が多い事への懸念が広がっている。期待される予防効果を発揮するには、1回のワクチンでは足りない。2度目を打って効果を補強する必要がある。
3日夜のメディア集計によると、初回接種は受けた人は471万8537人(22・53%)、2度目の接種も受けた人は2273万9521人(10・74%)で、計7045万8058回の接種が行われている。3日には、初回69万2281人、2度目10万8501人の計80万782回の接種が行われた。
だが、3日付G1サイトが、サンパウロ市エミリオ・リバス感染症研究所では、初回接種しか受けずに発病して入院した患者が増加中と報じるなど、接種数の増加だけでは喜べない事実の報告や警告が増えている。
サンパウロ州政府は5月末に、2度目の接種の予定日に接種を受けず、感染予防効果が補強されていない人が約50万人いるとして、5日を2度目の接種を受けていない人を対象とする一斉接種日(ジアD)とし、7~18時に接種を行う事を決めた。
同州保健局によれば、5月27日の時点で2度目の接種が遅れている人は、コロナバックで28万9290人、オックスフォード・ワクチンで21万2403人だ。全国での2度目の接種遅れは150万人以上に上る。
接種場所や時間は各市が決める。サンパウロ市では救急外来(AMA)併設の保健所(UBS)や通常のUBSで19時までだ。
専門家はサンパウロ州セラーナ市での集団接種の結果などから、2度目の接種を受ける事で抗体が強化され、感染予防効果が高まる事や、迅速に接種が進んで集団免疫を作る事が感染抑制の鍵である事を主張している。
もう一つ忘れてはならないのは、徹底的な検査や予防接種、社会隔離、マスク着用、手指消毒による迅速な感染抑制は変異株の発生も防ぐ事だ。ブラジルではマナウス株P1やリオ州で見つかったP2、サンパウロ州で見つかったP4といった変異株の発生が確認されている。
また、現在はインド株の流入、流行が懸念されている。同株感染者は、マラニョン州に着いた船の乗組員6人、インドから帰国した男性2人(リオ州とミナス州)の8人が確認済みだったが、2日にはパラナ州でも同株感染者が確認された。
同州の患者はアプカラナ市在住の71歳の女性で、コロナ感染症罹患者と接触後の4月19日に発症、同月28日に受けた検査で感染が確認された。74歳の夫と58歳の息子も感染し、息子は5月17日に死亡。その後の検査で、インド株感染が判明した。
同州カスカヴェル市在住で38歳の男性も同株感染が疑われているが、感染ルートは2件とも未公表だ。
また、2日にはマット・グロッソ・ド・スル州で、5月9日にコロナ感染症を発症、同18日に感染が確認された後、同28日に左目にムコール症の症状が出始めた71歳の男性が死亡した。ムコール症は感染爆発後のインド中心に増えている真菌感染症で、「黒い真菌」とも呼ばれている。
★2021年5月29日《ブラジル》ウルグアイで「致死率54%」黒い真菌=インド株感染者が各地に拡散か=間に合うか空港・港の水際対策
★2021年6月3日《ブラジル》ついに国内で「黒い真菌」確認=サンパウロ州やアマゾナス州で=急がれる感染拡大抑制
★2021年6月1日《サンパウロ州》集団接種で死者が95%も激減=セラーナ市の実験で効果歴然=周囲では感染増が続く中
★2021年2月11日《記者コラム》イスラエル並に迅速な予防接種を!