ブラジルでのサッカーのコパ・アメリカ開催をめぐり、ボイコットを求めるブラジル代表(セレソン)に対し、ボルソナロ大統領がセレソン人事への介入を試み、ブラジル・サッカー連盟のロジェリオ・カボクロ会長がチッチ監督の解任を試みたが、その報道が行われた直後、職員へのセクハラ疑惑で停職処分になるなど、激震が続いている。5〜7日付伯字紙、サイトなどが報じている。
今回のコパ・アメリカは、南米全体が激しいコロナ禍にあえいでいる中で行われるため、選手や南米諸国の国民から強い反発を受けている。とりわけそれは、コロンビアとアルゼンチンの開催断念宣言を受けて、5月31日に急遽、開催国に決められたブラジルで強いものがある。
選手の中では、欧州のクラブでプレー中の選手たちが強い反対の意向をかねてから表明していた。それは4日、ポルト・アレグレ市でのW杯南米予選、対エクアドル戦の試合後のインタビューの席で、カゼミロが「コパ・アメリカは普通に考えればやれる状態ではない」として、反旗を翻したことで表面化した。
このカゼミロ発言の前後から、セレソンがアルゼンチンやウルグアイの代表などとコパ・アメリカのボイコットを行うのではないかとの噂が流れ、選手たちの意思を理解し、尊重しようとすることで、チッチ監督が辞任を発表するのではないかとの噂も流れていた。
こうしたセレソンの動きを、ブラジル開催への働きかけを行ったボルソナロ大統領とCBFは快く思わず、チッチ監督の更迭を望んだ。カボクロ会長はそんな大統領の意図に応えるように、チッチ監督を更迭し、大統領派として知られる前グレミオ監督のレナト氏を後任にすることを決めた、という報道が6日の午後、流れた。セレソンに関しても、「選手が拒絶すれば、もうひとつのセレソンを組む」などの報道も行われた。
この行為は、「大統領がセレソンの人事に介入した」として物議を醸した。大統領がセレソンの監督人事に介入するのは、軍政時代の1970年に当時のメジチ大統領が同年のW杯の直前に選手起用に関して口を出したことで、サルダーニャ監督が解任に追い込まれて以来のことだ。
だが、この報道が行われた約1時間後に、カボクロ会長が突如、停職処分を受けた。理由はコパ・アメリカに関することではなく、その前から訴えられていたセクハラ疑惑が原因で、CBFの倫理委員会より1カ月間の停職処分を受けた。
カボクロ氏を停職にしたCBFはチッチ監督の留任を望んでおり、選手たちの間に生まれた緊張感を緩和しようとしていると、すでに報じられている。同監督のもとで、セレソンはW杯南米予選を5連勝中。選手たちがコパ・アメリカの開催に抵抗している中でチッチ監督を更迭すれば、危機的な事態も想定された。
6日はこの他にもコパ・アメリカをめぐり、バンデイランテス局のキャスター、ダテナ氏が、「ブラジル開催はなくなった」との報道も行うなど情報が錯綜。ブラジリアでは開催反対の車両デモ(カレアッタ)が行われるなど、大混乱の1日となった。
なお、セレソンは7日、コパ・アメリカに参加することを決めたが、そのことは8日のW杯予選(対パラグアイ戦)後に、パンデミック下での大会開催に対する苦言と共に発表される見込みだと報道されている。セレソンはボイコットも含めた対応について、他国代表とも連絡を取り合ったが、コンセンサスがとれなかったという。
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先週末は、コパ・アメリカをめぐるドタバタにブラジルが釘付けになり、「チッチ監督、ボルソナロ大統領介入で解任か?」の報が流れたときには緊張感も走った。同大会に関しては国民の意見も二分しているが、ネット上では大統領支持派が「セレソンのユニフォームを着るのを拒否する」との運動を起こし、笑い話になっている。セレソンの黄色と緑のユニフォームは18年の大統領選以来、「愛国者」を自称する人たちがボルソナロ氏支持の集会で好んで着ていたもので、それに対し、「セレソンを政治利用した」との批判の声も目立っていた。それだけに、大統領支持派のこの運動に対し、「やっとユニフォームが着れる。ありがとう」と皮肉る声も目立っていた。
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騒動の陰で忘れられがちだが、4日に行われたサッカーW杯南米予選でセレソンはエクアドルに2―0で勝利した。前半は0―0だったが、後半20分にリシャルリソンのゴールで均衡を破り、試合終了間際にはネイマールがダメ押しのPKを決めた。これでセレソンは南米予選5連勝。次戦は本日8日の敵地でのパラグアイ戦。騒動で何かとうるさく、試合に集中しにくい心労は察せられるが、なんとかベストを尽くして頑張ってほしいところだ。
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直前のゴタゴタで、開催されるのかどうかさえまだよくわからないコパ・アメリカだが、すでにコロナの専門家たちは6月に第3波が悪化する予測を行っている。コパのはじまりは13日で、終了が7月10日と、その真っ只中で行われることになる。開催を拒否する州が続き、連邦直轄区と三つの州での開催となるが、これらの連邦自治体はみな、集中治療室の占有率が80%以上。各国選手たちによるボイコットの可能性も含め、気になるところ。はたして?