「これでは、世間一般の日系移民のイメージが悪くなってしまうのでは」。1日に上院のコロナ禍の議会調査委員会(CPI)で証言を行った日系医師ニーゼ・ヤマグチ氏を見て、そう思わざるをえなかった。
ただでさえ、このCPIで彼女に期待できるようなものはなかった。彼女は昨年4月、信頼のおけるマンデッタ氏が保健相の頃、クロロキンをコロナの治療薬として認めさせたいと目論むボルソナロ大統領が、マンデッタ氏を解任して次の保健相にしようとしていた人物だ。
彼女は最初からクロロキンの熱心な推奨者として紹介されていた。当時80%近い支持率があった、医師としての経験も豊富だったマンデッタ氏と真逆の主張を行うような人物を果たして信頼できるか、といえばそれはかなり難しいものがあった。あの報道の時点で彼女はすでに「悪役」だった。
そして今回、CPIで話題の中心となった「影の委員会」の中心の医師としてヤマグチ氏は召喚を受けたわけだが、コラム子には全くもってお粗末な証言の数々に見えた。
ボルソナロ大統領との関係について、最初は「疎遠」を装っていたが、質問を受けるたびに近くなっていった。クロロキンについての基本知識は専門家とは思えないほどいい加減なものに見えた。これに対してCPIの委員たちが次々と怒り出していたが無理もなかった。
この件に対して、常にボルソナロ大統領寄りで知られる連邦医師審議会(CFM)のヤマグチ氏擁護の言い分が、輪をかけて情けなかった。
「CPI委員の態度には女性蔑視の態度があった」というものだが、これはヤマグチ氏の翌日に証言を行った、保健省のコロナ対策委員長になるはずだったルアナ・アラウージョ氏への態度と比較されたものだった。
CFMははっきりとは言わなかったが、「ヤマグチ氏がルアナ氏と容姿で比較されて冷たくされた」と言わんばかりだったとコラム子には見えた。たしかにネット上では、「かなりの美女」と評判になったルアナ氏に対し、ヤマグチ氏に「フェイア(ブス)」との中傷の言葉が多く飛んではいた。
だが、ルアナ氏がもっとも好まれた点はてきぱきと科学的な事実に基づいた発言を行ったことであり、ヤマグチ氏が嫌われたのは嘘を続けたことであることは明白だった。
容姿に関して言えば、ヤマグチ氏の場合、顔立ちというよりは、逆毛が爆発したような、あまり公の場に向かない髪型をした点にも問題があるようにコラム子は思う。容姿ではなく「身だしなみ」の問題と思える。
それにしても、伯国に来て11年、200万人という数の割に報道など目立つところで日系人が話題にならず、やっとなったかと思えばこれ。とても残念だ。(陽)