ボルソナロ大統領は12日、マスクも着用せずに1万2千人の支持者を引き連れ、サンパウロ市などでバイク行進デモ「モトシアッタ」を行った。今回のモトシアッタには、最高裁から捜査命令が出されているリカルド・サレス環境相も参加し、物議を醸した。13、14日付現地紙が報じている。
この前日の11日、ブラジルではコロナによる死者が2215人、新規感染者が8万6061人(メディアの集計、保健省の統計では死者2216人、感染者9万5149人)を記録。直近1週間での1日の平均死者数が1912人と、ここ20日間で最高を記録。死者の総数は48万人4千人を超えていた。
通称「モトシアッタ」と呼ばれるバイク行進デモは、5月9日のブラジリア、同23日のリオに続く第3弾だ。リオでも約1万人が参加し、エドゥアルド・パズエロ前保健相が現役軍人であるにもかかわらずに参加した上、演台にまで立って物議を醸した。また、パズエロ氏が軍からの罰則を受けなかったことで問題になった。
今回のモトシアッタ第3弾は、サンパウロ市での開催。参加者は午前10時に北部サンターナに集合した後、約130キロ先のジュンジアイー市を折り返し地点として出発。大統領たちは軍警警官や軍警のヘリコプターなどによる警備を受けながら、バンデイランテス高速道2車線分を独占してモトシアッタを行った後、約3時間半後の13時30分頃にサンパウロ市南部のイビラプエラ公園脇のバンデイランテス・モニュメントまで戻ってきた。
参加者は約1万2千人で、道中も「ビバ!ボルソナロ」などの掛け声をあげながら、意気揚々と行進を行った。
今回のモトシアッタには、大統領三男のエドゥアルド下議、タルシジオ・ゴメス・インフラ相に加え、史上最大規模の違法伐採擁護や違法木材輸出疑惑の捜査で逮捕の可能性さえ否定できないリカルド・サレス環境相も、マスクなしで参加し、物議を醸した。
また、大統領はモトシアッタ後の挨拶で、マスク着用不要論やクロロキンなどを使った早期治療有効論を主張し、ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事やその社会隔離政策を批判。その上で、サレス氏の無実まで訴えた。
これに関してドリア知事は、大統領、エドゥアルド氏、タルシジオ氏の3人に対して、「マスク着用義務を怠った」として552・71レアルの罰金を課した。
大統領の行動はコロナ第3波(保健担当者の見解では第2波の一部)の悪化が懸念されている中でのもので、実施前から密を生じさせ、感染拡大を招くと懸念されていた。
だが、支持者たちはこの行進を成功とみなし、ネット上では、「130万人を集め、ギネスブックに世界記録として載る」との虚ニュースまで流れた。また、モトシアッタに参加した支持者だけでなく、オニキス・ロレンゾーニ大統領府総務室長官までが、モトシアッタの動画を拡散し、「ボルソナロ氏はブラジル史上最も多くの国民の支持を得ている大統領だ」とほめ称えた。
このモトシアッタに対しては、22年大統領選で争うことが予想されるルーラ元大統領や上院の議会調査委員会(CPI)報告官のレナン・カリェイロス上院議長など、数多くの政治家から批判の声が出た。モトシアッタを批判したのは野党や反対派だけではなく、同CPIで大統領をかばい続けてきたエドゥアルド・ジロン上議までが、「パンデミックに関してあまりに鈍感すぎる不適切な行為」と批判する発言を行っている。
★2021年5月25日《リオ》ボルソナロがバイク大行進デモ=1万人以上集まるマスクなし政治集会=第2波の真っ最中、翌日に死者45万人超えへ
★2021年6月12日《ブラジル》第3波への恐れの中、ボルソナロ「接種済んだらマスク不要」で非難轟々=「いつまでマスクの囚人になっているのか!」とも=保健相は「検討中」と否定せず