上院のコロナ禍に関する議会調査委員会(CPI)は、コロナ禍での保健局スキャンダルを理由に4月に罷免されたウィルソン・ヴィッツェル前リオ州知事を迎えて行われた。証言の場には大統領長男のフラヴィオ上議が現れ、互いに罵り合う場面なども見られた。16日付現地サイトが報じている。
ヴィッツェル氏の召喚は、同氏がコロナ禍の最中に不正を行ったとされていることに加え、同氏がかつてはボルソナロ大統領と同じリオ州で同じ政党(キリスト教社会党・PSC)に属し、熱心な大統領支持者だったにもかかわらず、途中から袂を分かち、激しい対立関係となったことから注目されていた。
ヴィッツェル氏はこの日、一貫して、自身が罷免に至ったのは「連邦政府の報復による犠牲になった」からと主張し通した。ヴィッツェル氏はこの根拠として、2019年11月に騒動となった、リオ州連警のマリエレ・フランコ・リオ市議殺害事件捜査をあげた。
この騒動では、2018年3月14日に起きたマリエレ氏殺害の数時間前に、ボルソナロ氏が住む集合住宅に共犯者のエウシオ・ケイロス容疑者が現れ、当時下議だったボルソナロ氏の自宅に連絡を取って許可を得た後に域内に入ったが、ボルソナロ氏の自宅には行かず、同じ集合住宅内に住んでいた殺害犯のロニー・レッサ容疑者の自宅を訪れたとする門番の証言があったが、門番がその後に証言を翻すという事態が生じた。ボルソナロ大統領はこの疑惑でヴィッツェル氏が自分を追い込もうとしていると思い、その後、仲が険悪になっていた。
ヴィッツェル氏はリオ州知事としてのコロナ対策に関しても、「大統領支持の下院議員や州議員が率先して外出自粛令を破り、めちゃくちゃにされた」「連邦政府からのコロナ対策支援なぞ、ゼロに等しかった」と大統領を批判。さらには同政権の閣僚批判まではじめ、セルジオ・モロ元法相を「ボルソナロ氏に従ったメッセンジャーボーイ」と罵り、パウロ・ゲデス経済相を「自分のことを避けるようになった」と批判した。
こうした証言が行われる中、フラヴィオ上議がCPIに到着。フラヴィオ氏は終始、傍聴席からヴィッツェル氏の証言を妨害しようと試みた。
両者のやり取りでは、フラヴィオ氏が「この人はリオ州民をだました結果、ここにいる」と嘲笑したのに対し、2019年の連警捜査の件を皮肉ったヴィッツェル氏が、「私はあの門番とは違う。脅されて黙ったりはしない」と答える場面や、フラヴィオ氏が州議時代のラシャジーニャ疑惑を担当しているリオ州地裁のフラヴィオ・イタバイアナ判事らの司法関係者を侮る姿勢を批判する場面も見られた。
フラヴィオ氏の態度に対してレナン・カリェイロス報告官が、「お父様の教育がなっていないようだ」と皮肉ったのを受け、ヴィッツェル氏が「しつけのなっていない甘えん坊でなければ、もっと尊敬するのだがな」と連携して当てつける場面も見られた。
フラヴィオ氏の態度にはオマール・アジス委員長もしびれを切らし、「ヴィッツェル氏がリオ州民を殺した」と主張するフラヴィオ氏に対し「ワクチンが足りないこともだ」と返し、ワクチン対策に不熱心だった大統領を揶揄した。
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