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【日本移民の日2021年】「日本移民の日」に寄せて=在サンパウロ日本国総領事 桑名良輔

桑名総領事(在サンパウロ日本国総領事館提供)

 6月18日「日本移民の日」を迎えるにあたり、皆様にご挨拶を申し上げます。1908年に笠戸丸がサントス港に到着してから今年で113年となります。
 昨年8月に着任した私にとっては今回が初めての移民の日となります。先日、サンパウロにあるブラジル日本移民史料館を訪問し、レナト石川文協会長とリジア山下館長からいろいろなお話を伺いました。
 当時のブラジルでは、奴隷制廃止に伴う労働力不足を補うために外国人移民を積極的に導入しており、日本からの移住者の方々の多くは、はじめはコーヒー農園等で契約農民として働き、契約期間の終了後自らの土地を購入して独立されたとお聞きしました。移民史料館の展示からは、先達の方々の筆舌に尽くし難いご苦労と、そうした中でも日本の精神と文化を大切に受け継ぎ後世に伝えようとするご努力が偲ばれました。
 祖国日本から遠く離れたこのブラジルの地において、お互いに協力しながら数々の苦難を乗り越え、当地日系社会とブラジルの発展に力を尽くしてこられた先達とその子孫の方々に深甚なる敬意と感謝を表します。
 現在では200万人にも及ぶ日系人の方々が幅広い分野で活躍され、良きブラジル国民として厚い信頼と高い評価を受け、ブラジル社会において確固たる地位を築き上げています。そして、この日系社会の存在が今日の日伯関係の礎となってきたことは疑いのない事実です。私達は、この日本移民の日に、先達の方々が築いてくださったレガシーを受け継ぎ、更に発展させていく決意を新たにしています。
 昨年来、新型コロナの感染拡大により世界は今未曾有の危機を迎えています。私たちの生活も大きく変わりましたし、日系団体が主催する日本祭りなどのイベントは中止や延期、或いはオンライン形式となる等大きな影響を受けています。
 大変厳しい状況ではありますが、視点を変えるとポジティブな側面も見えてきます。これまで日系社会では若者の参加拡大が課題でしたが、コロナ禍によりデジタル化が進み、情報技術に強い多くの若者が積極的に参画するようになっています。
 また、デジタル化により距離を越えて各地方の日系団体間の交流の促進も期待されています。もちろん、医療や財務も含めてまだまだ多くの困難がある事も事実ですが、ワクチン接種も始まっており、経済面でも少しずつ明るい兆しが見え始めています。
 コロナ禍は100年に1度と言われる困難ですが、先達達が協力しながら多くの苦難を乗り越えて来たように、私達も世代や地域や国境を越えて協力することでこの危機を乗り越えられると信じています。私たち日本国総領事館としても、皆様と力を合わせてこの難局を乗り切るために最大限の努力をする所存です。
 結びに、改めて先人のご遺徳を偲び、皆様方お一人おひとりのご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げると共に、日系社会と日伯関係の益々の発展を願い、ご挨拶とさせていただきます。