「日系移民113周年」を迎えるにあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
今年の大河ドラマは渋沢栄一主人公の「青天を衝け」です。幕末・明治維新から明治・大正・昭和と生きた「日本資本主義の父」と呼ばれる、偉大な人物です。歴史から学び自分自身の生き方や働き方の参考にするのはとても大切だと思っており、毎週楽しみに観ております。大河ドラマはポルトガル語の字幕がありませんから、日系人の方々の視聴者は少ないと思うと、少し残念な気がします。
渋沢栄一は、銀行をはじめ多くの企業を創設した人として有名です。また、東京商工会議所の初代の会頭だった方です。商工会議所は明治維新から僅か10年後の設立で、日本の実業界の地位の向上を目指し、実業界の問題を多くの人で共有し解決することで共に発展して行くという目的で設立されています。
正に、我々ブラジル日本商工会議所も会員企業のベネフィットの為に、色々な情報を共有して、お互い成長して行くというコンセプトで活動しています。渋沢栄一の思いが時代を超え引き継がれています。
私は知りませんでしたが、渋沢栄一はブラジル拓殖会社や南米拓殖会社の設立に関わり、尽力した人物でもあります。移民の生活や事業がどれだけ困難なものなのかを当時理解していたと思われ、それゆえ、この様な会社を設立し、移民の方々をサポートしたのではないでしょうか。
日系移民113周年を迎える今、日系社会の中には、ブラジル日本文化福祉協会をはじめとして数多くの団体があります。その多くは、お互い助け合って、共に発展して行こうという考え方をベースに活動しています。渋沢栄一の基本コンセプトと同じです。日系人一人一人の成長は、日系社会の発展につながり、ひいてはブラジルの発展にもつながります。
渋沢語録の中に、「新しい時代には、新しい人物を養成して、新しい事物を処理せねばならない」というものがあります。過去の成功例に固執していては、新しい時代には対応できない、それゆえ「新しい人作り」が必要だという考えです。私は、ブラジルの日系社会の皆様と交流をする機会に恵まれており、新しいリーダー達が多く育っている事を実感します。
113年を迎えるブラジル日系移民の考え方のルーツに渋沢栄一の尽力があり、そのバトンを引き継いで「今」があります。そのバトンが新しい時代に、新しい人たちに引き継がれ、新しい日系社会が力強く成長している事にあらためて敬意を表します。