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特別寄稿=日本と日系社会の絆をより太いものに=衆議院議員  下地 幹郎

サンパウロの日本移民史料館にある「ありあんさ最初の入植地点」の展示場所で撮った記念写真

 2017年7月20日、私は初めてブラジルを訪問いたしました。ブラジルという広大な土地のなかで生きる皆さんの大きなエネルギーに直に触れて感激したことを、今も忘れることはありません。
 ブラジル訪問を行うにあたっての私の最大の目的は、「ブラジル移民の皆さんと意見交換をすること」でありました。「ニッポンから遠く離れ、移民としてブラジルへと渡った皆さんが、どのようなお考えのもとに移民を決断されたのか」「いま現在はどのような暮らしを営んでおられるのか」「そして今、どのような問題に直面されておられるのか」これらのことを、移民の皆さんから直接お聞きしたいという強い思いに突き動かされた私は、初めてのブラジル訪問を行う事を決断いたしました。
 ブラジル訪問においては、外務省の皆さんから様々なご指導・サポートをいただいたおかげで、多くの皆さんと意見交換を行うことができました。私からは「意見交換を行う前にどうしても移民史料館を見せていただきたい」とお願いさせていただき、ブラジル日本移民史料館を見学させていただきました。
 史料館の端から端まで食い入るように見させていただき、気がつけば2時間余りの見学となっておりましたが、とにもかくにも、この移民史料館で見聞きした一つ一つに、私の心は大きく揺さぶられておりました。
 「グローブのような手になるまで鍬を持ち、大地を耕したんですよ」移民の皆さんがどれほどの思いで頑張られてこられたのかと、私の目からは大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちました。そのことは今も私の胸のなかに強く刻まれ、決して忘れられない思い出の一つとなっております。
 「戦争という大きな出来事のなかで、移民社会のなかでも意見が分かれ、大きな溝が出来てしまったこともあったんですよ」というお話にも、大変心を打たれました。
 大きな夢を抱き、移民を決断し、少しずつでも前へ前へと進もうと日々励まれているなかで、「戦争」という、大きな悲劇が押し寄せる。それでもなお、試練を乗り越えていきながら、一世、二世、三世、四世と受け継がれて、今この時を迎えている。そのことに思いを致すとき、皆さんが積み重ねてきたご努力には、衷心より敬意を表するものであり、私どもの想像を遥かに超えております。
 私は、ブラジルでの視察の経験を自らの活動に生かしながら、「日系の皆さんに対して、政治家として何が出来るのだろうか」と、考えるようになりました。そのなかで、私がたどり着いた結論は、次の世代の多くの皆さんと、日本社会とのつながりを、決して細い糸にしてはならないこと、これまで以上に太い絆にしていかなければならないこと、そのためには、四世の皆さんも、一世から三世の方たちと同じように、「日本人としての誇り」を持ち続けられるような仕組みが必要だというものでした。
 そして、四世の皆さんを日本に受け入れ、日本文化を修得する活動などを通じて、日本への理解を深めるとともに、日本と現地日系社会との架け橋となる人材育成を目的とした「日系四世受け入れ制度」を提案し、平成30年7月1日よりスタートすることとなりました。
 しかしまだまだこの制度は、四世の皆さんのお気持ちに全てが寄り添えているベストミックスまでには至っていないと、私は考えております。それだけに、これからも皆さんの声に耳を傾けて、この仕組みをより良いものにするために頑張ってまいりたいと思います。
 私は沖縄県の出身であり、沖縄からも多くの皆さんがブラジル移民として頑張られていることを誇りとしております。また、日本から遠く離れたブラジルから、移民をなされた皆さんが、「遠くから見ているけれど、日本は良くなっているね、沖縄は良くなっているね」と思っていただけるような日本や沖縄県の姿をつくりあげることも、私たちから皆さんに対しての恩返しになると考えております。
 「世界に誇れるニッポン」となることが、移民の皆さんが、ブラジルの皆さんからもご評価いただける大きな要素になるのだと信じ、これからもその思いを大事にしながら、日系社会との連携をもっと深めていけるよう、努力を続け、前に進めてまいります。

下地 幹郎(しもじ みきお)

 1961年8月14日生まれ、沖縄県宮古島市出身。衆議院議員(6期)。沖縄開発政務次官、経済産業大臣政務官、内閣府特命担当大臣・郵政民営化担当大臣、国民新党国会対策委員長、同政務調査会長、同選挙対策本部長、同幹事長兼代表代行、日本維新の会非常任役員、同国会議員団政務調査会長、同国会議員団副代表兼選対本部長等を歴任。「日系四世受け入れ制度」を提案・スタートさせ、改善を働きかけ続けている。