上院本会議で17日、エレトロブラス民営化のための暫定令(MP)が承認されたが、下院承認案に修正が加えられたため、下院に差し戻して再承認後、裁可されると17、18日付現地紙、サイトが報じた。
同公社の案件は、現政権の民営化政策最大の目玉で、民営化によって消費者負担(電気代)は最大で7・36%軽減するとしている。この民営化MPは連邦政府が2月23日に両院議長に手渡したもので、22日までに両院が承認し、大統領が裁可しないと無効となるため、コロナ禍の議会調査委員会(CPI)を中止して審議した。
だが上院で新たな修正が加えられたことで、消費者負担がさらに重くなると反対する議員も多く、42対37という僅差での承認となった。
電力関係諸団体は、上院が承認したMPでは消費者の負担額が840億レアルも増え、今後数十年間、消費者の懐を圧迫すると見ている。
エレトロブラスはラ米最大の電力会社で、2020年の収益は63億8700レアル、今年第1四半期は16億900万レアルとされている。
同社傘下の発電所は、水力48、火力12、原子力2、風力62、太陽光1で、発電能力はブラジル全体の発電量の30%の5万1143メガワット(MW)に上る。
また、自社または提携会社が所有する送電線の総延長は7万1153・60キロ、変電所は366で、全国の約半分を占める。
現在は国と社会経済開発銀行(BNDES)、BNDESの出資会社とファンドが株式の61・69%を占めているが、民営化後はこの割合が45%に減る見込みだ。
消費者の負担増につながるとされる修正点は、天然ガスを使う火力発電所や発電能力が50MW以下の小規模水力発電所(PCH)との契約増、代替電気エネルギー源のためのインセンティヴ・プログラム(Proinfa)に含まれる発電所との契約延長などだ。
天然ガスの発電所との契約増は現行の6千MWを8千MWにするというもので、天然ガスが供給されていない地域までのガス管設置や新たな発電所建設で数十億レアル単位の経費増を招く。PCHとの契約増は最低で40%のPCHとの契約を義務付けるもので、やはり経費増を招き得る。
また、Proinfaで契約している風力発電などの代替エネルギー源は発電経費が高く、発電コストを押し上げる。また、MPでは既に操業している発電所の建設経費も発電コストに含む事を認めている。
上院は、水力発電所の貯水ダムの急速な水位低下を招いている事を批判し、国家水資源庁(ANA)などが水危機や電力危機が懸念される地域の発電量確保を優先し、水力発電所の貯水力を10年間で回復させる事を義務付ける項目も加筆した。
アマゾナス州マナウス市~ロライマ州ボア・ヴィスタ市間のインディオ居住地域に設置する予定の送電線設置工事に関しても、先住民の言語で作った基礎環境計画を提示し次第、開始可能とする項目が盛り込まれた。
上院が承認したMPは21日に下院が審議するが、下院はそのまま承認する見込みだと報じられている。
★2021年5月21日《ブラジル》下院がエレトロブラス民営化の暫定令承認=現政権の公社民営化の目玉=上院の承認期限は6月22日
★2018年2月6日《ブラジル》電力公社エレトロブラスの民営化を差し止めていた地裁の判決覆る=「政府の暫定令を覆せるのは最高裁だけ」と最高裁判事