先月29日に行われたものに続いてこの19日、ボルソナロ大統領への抗議行動が矢継ぎ早に行われた。今回は、コロナでの死者が50万人に達したこともあり、前回をさらに上回る規模のものとなった。19、20日付現地紙、サイトが報じている。
今回のボルソナロ大統領への抗議デモは、25の州都(サンタカタリーナ州フロリアノーポリスのみ降雨で中止)と連邦直轄区など、全国366市、国外42市で行われた。主催者によると、参加者は75万人に達したという。
今回のデモは、開催当日にブラジルでの新型コロナの犠牲者が50万人を超えたこともあり、全国的に加熱したものとなった。
サンパウロ市のパウリスタ大通りで行われたデモは、8万人で8区画を埋めた5月を上回り、12区画を埋める10万人が参加した。デモに参加した人たちからは、「ボルソナロ、ジェノシダ(大量殺戮者)」「クロロキンよりワクチンを」「ミリシア政府」などの罵声が乱れ飛んでいた。
デモを呼びかけたのが左翼政党や労組ということもあり、左派が多く集まり、「ルーラ2022」と来年の大統領選を煽る声も聞かれたが、ルーラ氏はこの日は不参加。代わりに元サンパウロ市市長(2013〜16年)で、18年の大統領選時点のフェルナンド・ハダジ氏が参加。ハダジ氏は「ボルソナロ氏は、罷免の審議をはじめる勇気のないブルジョアジーたちのおかげで現職にとどまっている」と批判。現状で下院には、史上最多の121通にのぼるボルソナロ氏の罷免請求があがっている。
ハダジ氏はさらに、「普段、大統領への批判を繰り返しているくらいなら、ジョアン・ドリア氏もここに姿を現し、下院議長が大統領罷免に動くよう、自分の政党に働きかけるべきだ」として、デモに参加しなかったサンパウロ州知事を皮肉った。
リオ市で行われたデモには、ブラジル音楽界の重鎮歌手のシコ・ブアルキ(77)も参加。参加者たちは大統領罷免のほか、エレトロブラス民営化反対などのシュプレヒコールも行った。
ブラジリアで行われたデモでは政治家たちの姿も見られた。それは主に左派の政治家ではあったが、保守派からもシダダニアの党首ロベルト・フレイレ氏が参加して、注目された。
今回のデモに関しては大統領支持派が「コロナ禍に密を作っているではないか」と反論する姿が見られた。反ボルソナロ・デモの参加者は大半がマスク着用で公衆衛生面でのルールに従っているが、ボルソナロ大統領支持者によるバイク・デモ「モトシアッタ」はマスクを着用しないデモだ。
また、BBCブラジルの報道では、現時点ではまだ右派の反ボルソナロ派があまりデモに参加していないことに関して、関係者が「参加したい気持ちはあるが、2016年にジウマ大統領罷免を叫んだ立場として、ルーラ氏を支持できない」と複雑な胸中を吐露するコメントが報じられていた。
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19日は全国で開催された反ボルソナロ大統領デモの話題で持ちきりだったが、それは国外にも飛び火した。イギリスでは同日、ロンドンの名所の一つであるロンドン・タワーの電光掲示板に、「ボルソナロ氏は重大な人権犯罪を犯した。ハーグ国際司法裁判所にかけろ」との言葉が大統領の顔写真つきで登場。さらに名前の「ジャイール(JAIR)」の綴りを少し変えて、「ジェイル(JAIL、監獄に入れろ)、ボルソナロ」という、痛烈なメッセージが飛び出し、話題を呼んだ。今や知名度は世界的なボルソナロ大統領が、「ユーモアのセンス」で有名なイギリス人にきついジョークで扱われた形になった。ジョークで済むうちはまだいいが。