不法伐採や違法木材の輸出問題でサレス環境相らに対する捜査を行い、環境省などの家宅捜査も要請した連警の警部が17日に更迭されたが、現在も捜査を指揮していると23日付現地紙などが報じた。なお、この捜査圧力に抗しきれなかったのか、サレス環境相の辞任が23日夕刻に発表された。
17日に更迭されたのは、5月19日に連警が行った「アクアンドゥバ作戦」を指揮した、汚職と金融犯罪抑制のための警察署担当だったフランコ・ペラゾニ警部だ。
同警部は、5月に行われた作戦の基になった、92ページに及ぶ調査報告書にサインをした人物。同作戦では、アレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事が出した35件の令状を受け取った連警が、連邦直轄区とサンパウロ州、パラー州で環境省や国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)などの家宅捜査を行った。
同作戦の中心は、欧米への違法木材輸出に関する疑惑で、リカルド・サレス環境相やIbama院長のエドゥアルド・ビン氏の公務停止と、サレス氏の銀行・財政関連の情報開示も命じられた。
サレス氏は、不法伐採や違法木材の輸出に関与した疑いと共に、不当な方法で資産を増やしていた疑いが持たれている。同氏は今月になってやっと、家宅捜索時から求められていた携帯電話の提出を連警に行った。モラエス判事は検察庁に、サレス氏逮捕についての意見書の提出も求めている。
サレス氏が不法伐採を行う製材業者らと関わりを持ち、Ibamaなどの環境監視機関の活動を妨げ、違法木材の輸出を助けるような行動をとっていた疑惑はアマゾナス州でも問題視され、現地連警トップだったアレッシャンドレ・サライヴァ警部が訴えていた。
同警部は4月に最高裁に調査報告書を提出した直後、同州での任務を解かれ、リオ州ヴォルタ・レドンダに左遷された。だが、カルメン・ルシア最高裁判事は同月の内に検察庁に意見書の提出を要請。同庁が5月に犯罪性を認める意見書を出したため、カルメン判事は6月2日にサレス氏に対する捜査許可を出した。
一連の出来事がサレス氏の立場をより不安定にし、ボルソナロ大統領も支えきれないとの憶測が広がったため、現政権はサレス氏を休職とし、捜査への対応に集中するよう仕向けた。
それ以降、公的な場には姿を現さなくなっていたサレス氏が、久々にボルソナロ大統領の傍らに立ったのは、サンパウロ州で行われたバイクを連ねての抗議デモの日だ。このデモには来年の大統領選副候補と見られているタルシジオ・フレイタス・インフラ相も参加しており、ペラゾニ警部更迭はその直後に起きた。
同警部更迭への動きがいつからあったかは不明だが、カルメン判事は更迭前夜の16日、連警が昨年行った「ハンドローンタス計画」で押収した不法伐採の木材の製材業者への返却を命じたアマゾナス州とパラー州の連邦地裁の判決履行を差し止める判断を下した。
この判断は連警からの要請を受けたもので、最高裁の大法廷が不法伐採に関する捜査についての審理を行うまで有効だ。連警は16日、両州地裁の判断は不法伐採者や製材業者を益するものとの見解を発表している。
現政権での不法伐採や森林火災増加は国際的な問題ともなっている。
★2021年6月4日《ブラジル》サレス環境相に2件目の捜査開始=疑惑の特別補佐官はさっさと辞表提出
★2021年6月2日《ブラジル》サレス環境相にアマゾン違法伐採の幇助疑惑=連邦検察庁の捜査申請を最高裁許可
★2021年5月20日《ブラジル》環境相自らアマゾン木材密輸に関与?=自然保護機関のはずが=違法伐採業者に便宜も
★2020年5月27日《ブラジル》アマゾンでの不法伐採が蔓延=1日に2110ヘクタールも