上院コロナ禍議会調査委員会(CPI)で24日、感染症学の専門家らが、適切な対策をとっていれば「コロナの死者は約40万人少なくて済んだ」との見解を表明したと24、25日付現地サイトが報じた。ブラジルでの新型コロナの死者は19日に50万人を突破し、24日には50万9141人に達している。
24日のCPIに招かれたのは、ペロタス連邦大学で新型コロナに関する研究「Epicovid」のコーディネーターを務め、感染症学が専門のペドロ・アラル氏と、アムネスティ・インターナショナル事務局長で医師のジュレマ・ウェルネッキ氏だ。
アラル氏は「ブラジルの死亡率が世界平均並みなら死者は5分の1で済んだ」と語った。
具体例として、23日に報告された世界中の死者の33%が、人口比で2・7%のブラジルで発生した事。世界の死亡率の平均は500人/100万人以下なのに、ブラジルの死亡率は2345人/100万人である事は、特異な状況である証拠だと論じた。
また、ブラジルのコロナ対策の誤りとして、効用が否定されている医薬品による治療推奨、全ての感染症対策に不可欠な検査や濃厚接触者の確認、隔離が不十分である事、保健省や対策委員会のリーダーシップの欠如、マスク着用の不徹底、マスク着用や3密回避、防疫対策の必要を説く一貫した情報の不足を挙げた。
さらに、18年の大統領選でボルソナロ氏への投票率が10%未満だった市の死亡率は70人/10万人だが、90%以上だった市は313人/10万人である事なども示し、科学的な根拠のある対策を否定する姿勢と死者数の関係も示した。
現政権が社会的な距離確保のための外出規制などに反対し、厳しい規制を採用した知事達を訴えた事や、大統領がマスク着用に抵抗を示し、政府関係者が各種イベントにマスク不着用で参加している事は周知の事実だ。
アラル氏は、感染抑制策の不徹底やワクチン接種の遅れによる新型コロナ感染症の蔓延は、大統領の姿勢によるところが大きいとし、ファイザー社ワクチンやコロナバックの購入が速やかに行われていれば、9万5500人~14万5千人が死なずに済んだとした。また、他のワクチンも含めた研究を行っている人達はさらに多くの死者が回避できたと見ている事も明らかにした。
ジェレマ氏も、各種社会団体の研究から、ワクチン接種がなくても、社会的な距離確保や実態確認のための検査実施などで最低12万人の死が回避できていたと主張。
広範囲の検査で感染実態を把握し、感染抑制を図る必要がある事は世界保健機関(WHO)が当初から主張しており、ネルソン・タイシ氏も保健相就任直後に実施を約束した。だが、ブラジルでは現在まで画餅に終わり、大量の検査キットの使用期限切れも起きている。
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