国際協力機構(JICA)が放送大学学園と共同制作したビデオ教材「日本の近代化を知る7章」のポルトガル語版DVD「Sete Capítulos sobre a Modernização Japonesa」が完成したことを記念して、サンパウロ大学(USP)法学部国際法・比較法学科と日本開発研究プログラム(フジタ・ニノミヤチェア)が6月22日午後6時からWeb上でシンポジウムを開催した。240人以上がオンラインで参加した。
これは、開発途上国の未来を担うリーダーになる学生らに対し、ビデオ教材を通して欧米とは異なる日本の近代化、および開発協力の経験を学ぶ機会を提供し、自国の発展に役立ててもらうもの。
最初に、江口雅之JICAブラジル事務所長は、「JICAは開発途上国を経済面や技術面で援助しています。2019年にJICAとUSPの共同事業で設立されたフジタ・ニノミヤチェアの目的は、日本が発展してきた経験を元に、開発途上の国々と日本の歩んできた道のりを共有することです。このDVDの視聴者が、日本の発展の秘密を知ることで、日本史を学ぶためにも貢献できることを願っています」とあいさつした。
続けて、山田彰駐ブラジル日本国特命全権大使と西森ルイス連邦下院議員があいさつした。山田大使は「このDVDの内容は、北岡伸一JICA理事長のような学識のある人々によって制作されました。日本の江戸時代末期から近代社会の到来、そして第2次世界大戦後の復興まで、ヨーロッパとは異なる日本の発展の仕方を見ることによって、物事の新しい見方が生まれます。それが、ブラジルの発展にも役立つ事を願っています」と述べた。
約1時間半のシンポジウムでは、同DVD第3章「戦後日本の政治外交」が紹介された。田中明彦政策研究大学院大学学長が講義し、第2次世界大戦後、日本がどの様に他国の政治的圧力から立ち直り、海外で国際貢献ができるまで発展したかが分かるように、様々な映像や写真、数値データなどが盛り込まれた内容になっている。
DVDの視聴後、国際関係研究所 (USP)の大貫ジャニナ教授兼所長と二宮正人国際比較法学部教授が約15分の講評を行った。
大貫氏は「DVDの完成と記念シンポジウムは、USPとフジタ・ニノミヤチェアにとって大変光栄です。日本とブラジルは長年、良好な関係を築いてきました」とコメントした。
二宮氏は敗戦からの奇跡的な復興と米国との関係について説明した後、「日本は敗戦で台湾や朝鮮半島、中国、太平洋の島々の支配地を失い、そこで生活していた日本人の多くの住人や軍人が日本列島に戻りました。日本政府は彼らの仕事を作るためにも移民を送りました。JICAは移民を支援し、現在は日本と世界各国の関係を維持する国際貢献に尽くしています」と締めくくった。
質疑応答では「日本の少子高齢化について」「戦後日本はどうして発展できたのか」などの質問が寄せられた。少子高齢化問題について、二宮氏は「有効な解決策は外国人の受け入れと見られており、現在も日系ブラジル人やペルー人が日本で働いています。しかし、法的な整備が不十分で効率的なシステムが確立されていないのが現状です」などと回答した。