25日に行われた上院のコロナ禍の議会調査委員会(CPI)で、保健省によるインドのコロナワクチン「コバクシン」の購入契約で不正の疑いがあると訴えていたルイス・ミランダ下議(民主党・DEM)と、兄弟で保健省運輸課輸入部門主任のルイス・リカルド氏が、保健省内で賄賂を使ってまで契約を急がせようとしていたこと、さらに、この件にかんしてボルソナロ大統領が、リカルド・バロス下議(進歩党・PP)が関与していたことをすでに知っていたことを証言したことで国に激震が走った。26〜28日付現地紙が報じている。
全国が注目した25日のCPIは緊迫した空気の中、予定より2時間ほど遅れて、午後4時過ぎからはじまった。この日はまず、ルイス・リカルド氏の証言からはじまった。
ルイス・リカルド氏は、2月25日に保健省とインドのバーラト・バイオテック社との間で、2千万回分のコバクシンの購入契約が、当初伝えらえていた単価の10倍以上の価格(約16億レアル)で行われて以来、一刻も早く輸入するために「契約書にサインするよう強要されていた」ことを改めて主張した。
同氏によると、「ロドリゴ」という同僚が同氏に、「医薬品供給会社の男性が、保健省の幹部と交渉した際、贈賄を払えば契約書にサインしてやると言われて引き下がった」とも語っていたという。
ルイス・リカルド氏はさらに、コバクシンの購入に関しては、監査担当のレジーナ・セリア・シウヴァ・オリヴェイラ氏が自分よりも権限を持っていたこと、さらにエドゥアルド・パズエロ前保健相の解任が行われたのは、保健省内がこの問題の渦中にあったときであったこともほのめかした。
ミランダ氏はこのあとで証言を行った。同氏は3月20日、ルイス・リカルド氏と共に、保健省内での問題について、ボルソナロ大統領に直訴にいった際、大統領自身が「(このコバクシンの件も)ある下院議員がかかわっていることだろう」と語ったと証言した。
この「ある下院議員」をCPIの委員たちが聞き出そうとした際、ミランダ氏は最初「失念した」などと言い、具体名をあげることを拒んだ。だが、ランドルフ・ロドリゲス副委員長から、「それは連邦政府側の下議か」と質問されて「そうだ」と答えるなど隠そうとした。こうしたミランダ氏の態度にしびれを切らしたオマール・アジス委員長は、「件の下議の名前を明かすまでは閉会しない」と強気の態度を示した。
ミランダ氏は計12回、下議の名前を明かすことを拒み続けたが、午後10時過ぎ、シモーネ・テベテ上議の質問の途中、ミランダ氏は「その下議はリカルド・バロス氏だ」と発言。場内は騒然となった。
それは予想外の名前ではなかった。バロス氏は下院で連邦政府リーダーをつとめている上、コバクシン疑惑が浮上した当初から契約の仲介を行ったとされているプレシーザ・メジカメントスには、同氏がテメル政権で保健相をつとめていた時代に汚職疑惑が浮上した経緯があったためだ。
また、現政権下の2019年以降、同社の収益は急速に伸びている。
CPIは、ボルソナロ大統領がバロス氏の不正を知りながら黙認した責任を最高裁に問う意向を示している。
★2021年6月26日《ブラジル》コバクシン疑惑=仲介企業の陰に大統領長男?=BNDESの貸付を世話か=契約締結直後には祝福も=ミランダ氏の証言直前に発覚
★2021年6月25日《ブラジル》ミランダ下議「金曜に国は真実を知る」=コバクシン疑惑をCPIで=大統領関与の証拠を証言へ=政府逆ギレ、捜査命ずる
★2021年6月24日《ブラジル》インド製ワクチンで1千%の水増し契約発覚か=下院政府リーダーが関与=大統領も事実知っていたとも