保健省局長がアストラゼネカ社のワクチン購買の交渉の際、「1回分につき1ドルの賄賂」、累計で20億レアル(約447億円)分の賄賂を薬品供給企業に請求していたとの告発が6月29日に明らかになった。また同日、コバクシン購入での不正疑惑を訴えていたルイス・ミランダ下議が、下院の政府リーダーという重職を務める今疑惑の中心人物のリカルド・バロス下議から口止料として賄賂の申し出を受けたことを暴露した。6月29日付現地サイトなどが報じている。
6月29日午後8時過ぎ、フォーリャ紙サイトが保健省の賄賂請求疑惑を報じた。これは薬品供給企業ダヴァチ・メディカル・サプライのルイス・パウロ・ドミンゲッティ・ペレイラ氏の証言によるものだ。
ドミンゲッティ氏によると、賄賂の請求は2月25日、ブラジリアにあるショッピング・センターのレストランでの夕食時、アストラゼネカ社のワクチン購入契約の交渉の席で起こったという。この会議は保健省側の提案で行われたものだった。
この席でドミンゲッティ氏は4億回分のワクチンを単価3・5ドルで交渉しようとしたが、その際に保健省のロジスティック局長のロベルト・ジアス氏から、「我々と仕事をするには、保健省内で働く仲間になってもらわないと。しきたりに従ってほしい」と切り出したという。
発言の意味がわかりかねたドミンゲッティ氏が聞き返すと、ジアス氏は、「1回分につき、1ドル支払ってほしい」「2億回なら10億レアルだな」との表現で贈賄を望んだという。その発言を行った時、ジアス氏の傍らには陸軍の軍人と企業家が同席していたという。
ドミンゲッティ氏がそれに応じなかったため、ジアス氏は「よく考えてくれ。改めて呼ぶから」といって別れた。次に呼ばれて保健省に出向いたときも、ジアス氏は「書類はまだか」などと訊いた後、別室で待たせた上、賄賂を払うことを了承するかと電話で尋ねてきたが、このときもドミンゲッティ氏が首を縦に振らなかったため、交渉は実現しなかった。
ドミンゲッティ氏はその後も何度か保健省に足を運んだが、誰もワクチンを買うとは言い出さなかったという。
このフォーリャ紙報道の数時間後、ジアス氏は保健省から解任された。
2019年1月、疑惑の中心のバロス下議からの推薦を受けて、ジアス氏は保健省のロジスティック部に配属された。2020年10月には、ボルソナロ大統領から国家衛生監督庁(ANVISA)の委員に推薦されかかったが、ロジスティック業務で契約違反を行っていた疑惑が発覚し、見送られたという。
一方、フォーリャ紙の報道とほぼ同じ時間に、クルゾエ誌がミランダ氏に行った独占取材を報じた。
それによるとミランダ氏は、インド製ワクチン「コバクシン」購入に関与していたロビイストのシルヴィオ・アシス氏の自宅に3月31日と5月の2度呼ばれ、「コバクシンの購入契約を邪魔して欲しくない」として、口止料に賄賂提供の申し出を受けたという。ミランダ氏は3月20日にボルソナロ大統領にコバクシン不正疑惑を訴え、調べるよう直訴していた。同氏は5月にももう一度呼ばれたが、このときはバロス氏本人も同席していたという。
連邦政府はこの日(6月29日)、コバクシンの購入契約を一時的に無効とすることを発表した。
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