委託販売員が保健省の局長(当時)からコロナワクチン購入の条件として賄賂の支払いを要求されたと証言して注目を浴びた米国ダヴァティ社が、非政府団体(NGO)と共に保健省を訪れ、ワクチン購買契約を結ぼうとした上、この団体がアストラゼネカ社とヤンセン社のワクチンを保健省が購買契約した以上の価格で地方自治体に売ろうとしていたとの疑惑が浮上している。コバクシン疑惑などに続き、ワクチンに関する新たなスキャンダルとなっている。1〜5日付現地紙が報じている。
ダヴァティ社と福音派団体によるワクチン売り込み疑惑は、1日付のサイト「アジェンシア・プブリカ」に報じられたのをきっかけに、一気に広まった。このことは、ダヴァティ社のブラジル代表クリスチアーノ・カルヴァーリョ氏がかわしたメールの内容などで明らかになった。
その報道によると、ダヴァティの委託販売員ルイス・パウロ・ドミンゲッティ氏は3月4日、非政府団体(NGO)「人権問題全国事務局(Senah)」の代表で福音派牧師のアミルトン・ゴメス・デ・パウラ氏と共に保健省に赴き、4億回分のアストラゼネカ・ワクチンの契約を行おうとした。そのときに提示されたワクチンの価格は1回分につき11ドルで、連邦政府が同ワクチンのブラジル窓口であるオズワルド・クルス財団(Fiocruz)との間で交わした契約価格の3・16ドルや、インドのセーラム研究所との間で交わした完成品購入価格の5・25ドルを大きく上回っている。
また、この団体が3月に、ブラジル南部の州や市を中心に、まとまった量のアストラゼネカ・ワクチンを迅速に供給すると書面で伝え、購入契約を促していたことも明らかになった。
さらにアミルトン・ゴメス牧師が連邦議会の福音派部門で強い影響力を持ち、大統領長男のフラヴィオ上議とともに写っている写真も同時に報じられていた。
1日は上院のコロナ禍の議会調査委員会(CPI)でダヴァティの委託販売員ドミンゲッティ氏が、保健省ロジスティック局長のロベルト・ジアス氏からアストラゼネカのワクチン1回分につき1ドルの賄賂を要求されたとの疑惑の証言を行った日でもある。
ドミンゲッティ氏はこの日、ゴメス牧師を介して、保健省の関係者とコンタクトをとったことも証言している。また、同NGOは、ドミンゲッティ氏は人道的な理由でブラジルやラ米各国にワクチンを販売しようとしていると語っている。
3日、グローボ局のニュース番組「ジョルナル・ナシオナル」が、ドミンゲッティ氏がゴメス氏と共にワクチン購入契約の話をするために3月4日に保健省に赴いたときに対応した保健省側の人物の一人で、保健省との話を仲介していたのが保健省伝染病局長のラウリシオ・モンテイロ・クルス氏であったと報じたことで、Senahに関する疑惑はさらに広がった。それによるとクルス局長は、実際に契約された額よりもさらに高い、一回分につき17・5ドルの価格でアストラゼネカ・ワクチンを契約させようとしていたという。
さらに、この報道で明らかにされたゴメス牧師の3月4日付のメールには会議の様子が写った写真が添付されており、その中には、同牧師がクルス局長とともに写ったものもあったという。
その後の報道では、ダヴァティは2020年6月に米国テキサス州で創設された会社で、米国内の社員は3人しかいないこと、ワクチンの販売はしておらず輸送専門であること、大統領派の下議ロベルト・デ・ルセナ氏(ポデモス)がSenahのワクチン契約を促進するような法案を下院で進めていたなどの疑惑も報じられている。