7日、上院でのコロナ禍に対する議会調査委員会(CPI)でオマール・アジス委員長は、ワクチン契約交渉で賄賂を求めたとの疑惑をもたれている保健省ロジスティック元局長のロベルト・ジアス氏に対し、「虚偽の証言を行った」として、同CPIで初となる逮捕命令を下した。アジス委員長はこの日、不正に関わった保健省勤務の軍人らに対して厳しい物言いを行って軍部の反発を招くなど注目を浴びた。7、8日付現地紙、サイトが報じている。
7日にコロナ禍CPIの召喚を受けたジアス氏は6月末、米国ダヴァティ社のブラジルでの委託販売員である軍警のルイス・パウロ・ドミンゲッティ氏から、「アストラゼネカ・ワクチンの契約交渉の際に1回分につき1ドル」の賄賂を要求したことを暴露された。同件はコバクシン疑惑と並ぶ、国を揺るがすスキャンダルに発展している。
ジアス氏はこの日、証言の席でこの賄賂交渉の疑惑を否定した。同氏はドミンゲッティ氏が言及した2月25日のブラジリアのショッピングセンターでの夕食に関して、「会う予定ではなかった」と語った。
ジアス氏によると、この日は友人たちと食事をしていたが、たまたま、保健省ナンバー2のエウシオ・フランコ氏がドミンゲッティ氏と話をしていたので、一緒に合流したに過ぎず、そこでワクチンの交渉も行っていなかったという。
だが、この証言の後、CNNブラジルが、CPIが1日に押収したドミンゲッティ氏の携帯電話の通話内容(メッセージ)を公開した。そこでは、ドミンゲッティ氏が2日前の2月23日に関係者に「25日にジアス氏と会って交渉することになった」との音声メッセージが残されていた。
2月25日には、ドミンゲッティ氏を保健省関係者に引き合わせたオジロン氏からの、「ジアス氏と会うために、どんな交渉を行ったのかを知りたい」との音声メッセージも残っていた。携帯電話にはその翌日も、ジアス氏と会い、ワクチンに関する交渉を行ったことを示すメッセージが残されていた。
これを受け、アジス委員長は午後5時20分頃、「虚偽の証言を行った」としてジアス氏に対する逮捕命令を出した。ジアス氏の弁護士は激しく反論したが、同委員長は逮捕を断行した。ただし、その後、保釈金を払ってその日のうちに釈放された。
同CPIではこれまでも、ファビオ・ワインガルテン元社会通信局(SECOM)やエドゥアルド・パズエロ前保健相、ニーゼ・ヤマグチ医師、ドミンゲッティ氏らの証言時に、虚偽証言が問題となったが、アジス委員長はどの証言者に対しても逮捕命令を出してこなかった。
アジス委員長はこの日、もうひとつの件でも物議を醸した。それは、「連邦政府内ではもう何年も、軍が絡んだ犯罪を見てこなかった」として、コロナ禍における問題に軍の関係者が絡んでいることを揶揄したためだ。保健省のワクチンの不正契約疑惑では、軍や軍警関係者の名前がしばしば浮上している。
この発言に対して、ヴァルテル・ブラガ・ネット国防相は3軍の長たちと連名で、「根拠もない無責任な発言」「そのような馬鹿げた攻撃は受け入れることができない」との声明を出した。「軍は国の安定のために機能しており、パンデミックの初期から人命を救うために尽力している」「一部の関係者が行ったことを軍全体のことであるかのごとく語った」との発言も行った。
ブラガ・ネット国防相の声明に対しては、マスコミから「威嚇的」との批判があがっている。