ボルソナロ大統領やミシェレ夫人が、福音派牧師が代表をつとめる非政府団体(NGO)のワクチン不正契約に直接関与していた疑惑が、上院のコロナ禍議会調査委員会(CPI)で没収されたルイス・パウロ・ドミンゲッティ氏の携帯電話の通話内容(メッセージ)から浮上している。12日付現地サイトなどが報じている。
米国の薬品販売企業「ダヴァティ」のブラジルでの委託販売員をつとめるドミンゲッティ氏の携帯電話は、1日のCPIで証言した際、ボルソナロ大統領がコバクシンの不正契約を黙認した疑惑を訴えたルイス・ミランダ下議が不正を行っていると見せかけようとした責任を追及されて没収された。
その内容は8日以降、徐々に公開されはじめていたが、12日はボルソナロ夫妻の名前への言及があったことで、俄然、注目度を上げている。
ヴェージャ誌が報道したのは、ドミンゲッティ氏が3月3日に行った対話だ。ドミンゲッティ氏はこのとき、ダヴァティ社が所有するアストラゼネカ社のワクチン購入でNGOの「人権問題全国事務局(Senah)」と交渉を進めており、そのことに関して「ラファエル」なる人物とメッセージを取り交わしている。
Senahを介したワクチン購入の契約は、保健省の承認を得て一般には公表されない形で行われていたが、保健省がオズワルド・クルス財団(Fiocruz)との間でアストラゼネカ・ワクチンを購入することを決めたときの単価の3倍以上もの額で交渉が行われていた。
ドミンゲッティ氏はそこで、ラファエル氏に、「ミシェレが現れた(Michelle está no circuito agora)」と切り出した。ラファエル氏が驚いた様子で「ミシェレ? ミシェレ・ボルソナロか?」と返すと、ドミンゲッティ氏は「そうだ。大統領夫人だ」と答えた。
ドミンゲッティ氏はさらに、Senahの会長であるアミルトン・ゴメス・ダ・パウラ牧師がミシェレ夫人と一緒に入ってきたこともラファエル氏に伝えている。アミルトン牧師はドミンゲッティ氏を保健省の担当者に引き合わせた人物とされている。
同氏はこの直後、「ダヴァティ」のブラジル代表のクリスチアーノ・カルヴァーリョ氏と連絡を取るように求め、「ロベルト・ジアスはB案だ」とも書き送った。
また、サイト「アンタゴニスタ」は3月8日のドミンゲッティ氏の会話から、ボルソナロ大統領が直接Senahの契約に関わった疑惑を報じている。通話の相手はこの日もラファエル氏だが、転送の痕跡があり、それがアミルトン牧師であることが有力視されている。
ドミンゲッティ氏は午前10時5分の通話で、「いますぐSGS(ワクチンの保証書)を送ってくれ。ボルソナロ氏が求めているんだ」とのメッセージを転送している。
しばらくしてラファエル氏が「すぐに用意はできない」と返すと、ドミンゲッティ氏は「エルマン(ダヴァティ会長)とすぐに話してくれ。アミウトン牧師が今、困っているんだ。彼は保健省にワクチンのオファーを行ったんだが、大統領が彼を直接呼び出したんだ。今、ふたりは一緒にいる」とのメッセージを返している。
14日、コロナ禍CPIのオマール・アジス委員長はミシェレ夫人をCPIに召喚しない方針を発表した。同委員長はその理由を、「権力者を脅かすために家族の名前が利用されることがよくある」としたが、同時に「夫人を呼ぶとなると、大統領との駆け引きが必要になる」とも語った。
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