ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》来年度連邦予算基本法で選挙基金を3倍に=反対のはずの大統領派も賛成=保健・教育予算を削って回す=ボルソナロが拒否権使う?

《ブラジル》来年度連邦予算基本法で選挙基金を3倍に=反対のはずの大統領派も賛成=保健・教育予算を削って回す=ボルソナロが拒否権使う?

連邦議事堂(Marcello Casal)

 連邦議会は15日、2022年の連邦予算基本法(LDO)を可決した。この中には、選挙における政党割り当て資金とされる「選挙キャンペーン財政特別基金」(フンドン)を昨年の地方選時の約3倍の57億レアルにすることも含まれており、ボルソナロ大統領派で有名な議員たちも増額に賛成票を投じたため、支持者から強い批判を浴びた。15、16日付現地紙、サイトが報じている。
 2022年度のLDOはジュセリーノ・フィーリョ下議(民主党・DEM)が報告官をつとめ、15日朝、上下両院の予算委員会で承認された後、本会議にかけられ、下院では278票対145票、上院でも40票対33票の投票結果で、その日のうちにスピート可決された。
 その中で最も注目を浴びたのが、LDOの本文に続いて承認された修正動議により、57億レアルを割くこととなったフンドンの存在だ。ジュセリーノ報告官は、「2022年は選挙の年なので、増額は必然」と、大幅増額を肯定した。
 だが、昨年の地方選のときは20億レアルだったフンドンが一気に57億レアルにあがったことに対しては、議員たちからの反発も強かった。エドゥアルド・ジロン上議(ポデモス)は「コロナ禍で未曾有の保健への費用が必要で、1480万人もの国民が失業中なのに、選挙にこれだけの金が割かれるのはいかがなものか」と苦言を呈している。同様の批判は、ロドリゴ・マイア前下院議長などからも出ている。
 こうした反論にもかかわらず、フンドン増額の修正動議は可決された。このことに関し、ネット上ではボルソナロ大統領派の議員、大統領長男のフラヴィオ上議(パトリオッタ)、3男エドゥアルド、ビア・キシス、カルラ・ザンベッリ下議(いずれも社会自由党・PSL)が支持者らへの釈明に追われた。これらの議員はいずれも、フンドンに対して批判的な発言をしていながら、実際には賛成に票を投じたためだ。大量の選挙資金を持つ大政党でなく、ボルソナロ大統領は弱小政党から出馬してごく少ない選挙資金で当選したこともあり、かねてから、汚職や金満選挙を否定して、有権者から支持を得てきた。

 ネット上での強い批判を受け、これらの議員たちはそれぞれに、弁明の動画や投稿を発信した。エドゥアルド氏は、「父がLDOを承認するかどうかはわからない」と動画で発言。大統領による拒否権行使の可能性を匂わせた。
 ザンベッリ氏は、「私は賛成に票を投じたが、ノーヴォが提案したフンドンの条項外しを支持している」とし、キシス氏も、「フンドンには反対した」と支持者への対応に追われていた。
 フンドンが3倍近い増額となったのに対し、今回承認されたLDOでは、現状1100レアルの最低賃金は、インフレ率を下回る1147レアルへの調整に終わっている。来年度のLDOは、来年の国内総生産(GDP)の成長率を2・5%と想定している。
 このLDOでは、22年に国が力を入れる57のプロジェクト、223の活動に関しても記している。その中には、コロナ対策を意味する「全国予防接種計画(PNI)」や、「腫瘍学対応のためのインフラづくり」、人口5万人までの小さな市に対する、持ち家政策の「カーザ・ヴェルデ・エ・アマレラ」の重点的拡充、2年連続で見送られた「国政調査の実施」などがあげられている。
 フンドン増額に批判的な議員たちは、最低賃金がインフレ率以下の調整となっていることや、保健衛生や大学関連の予算が減額されていることなどにも苦言を呈している。LDOは最終的な年間予算法(LOA)案ではなく、フンドンの額などは、大統領による拒否権行使や報告官によるLOA審議時の修正などによって、変更が加えられる可能性がある。