エドゥアルド・パズエロ前保健相が中国製コロナワクチン「コロナバック」に対し、正規の契約先であるサンパウロ市ブタンタン研究所ではない仲介企業を通じて、同ワクチンを正規の3倍の価格で契約していた疑惑がビデオ動画と共に浮上した。インド製のコバクシン、米国ダヴァティ社との間でのアストラゼネカ・ワクチンの不正契約に続く新たな疑惑浮上となった。18日付現地紙などが報じている。
この疑惑が浮上したのは16日、パズエロ氏とサンタカタリーナ州の企業「ワールド・ブランズ」との間で「契約が合意に達した」という動画が流されたことによってだった。12日付のフォーリャ紙のコラムでも言及された動画は、パズエロ氏と企業の代表との会議の最後の瞬間を記録したもので、すでに上院のコロナ禍議会調査委員会(CPI)の手に渡っている。
動画には、3月11日に保健省内でパズエロ氏とワールド・ブランズの関係者の計5人が会った後に一列に並んで映っており、中央に立ったパズエロ氏が、「ワールド・ブランズ社との間で、中国から直接、3千万回分のコロナバックを購入する件で覚書を交わした」と語り、同社の代表者と「ありがとう」と握手するという形で、契約締結の喜びの談話が記録されている。
この契約は保健省の正規のものではない上、ブタンタン研究所との契約での単価の「1回分につき10ドル」の3倍近い、28ドルでの契約であったことも発覚した。保健省はこの会議の2カ月前に、ブタンタン研究所との間での1億回分のワクチンを1回につき10ドルで購入する契約を結んでいる。
この疑惑に対し16日、コロナバックを推進していたジョアン・ドリア・サンパウロ州知事は、「自分たちと仕事をする一方で、パズエロ氏はボルソナロ政権の名を借りて、別の過払い契約を行っていた。国の恥だ」とツイッターで怒りをあらわにした。また、ブタンタン研究所のジマス・コーヴァス所長も「仲介業者とは契約をするなと、何度も釘を刺したにもかかわらず、このようなことを」と強く抗議した。
パズエロ保健相(当時)とブタンタン研究所との間には昨年10月20日、ワクチンの購入契約が成立していたが、ボルソナロ大統領の反対で翌日に撤回。今年1月に国家衛生監督庁(ANVISA)から正式に緊急使用許可が降りたことで、正式契約に至った経緯があった。
さらに疑惑を深めるものとして、このワールド・ブランズの社長と役員2人が2014年5月に、蛍光灯や有線リモコンカート、包装用のカートンなどの不正輸入により、1年半ほどの実刑と罰金、社会奉仕などの有罪判決を受けていたことが17日に報じられた。同件については、第4地域裁と高等裁判所も事実であることを認めている。
保健省を巡る疑惑は、プレシーザ・メジカメントス社との間での10倍もの過払いでのコバクシン購入疑惑、米国ダヴァティ社と福音派牧師が代表をつとめる非政府団体の全国人権事務局(Senah)を介したアストラゼネカ・ワクチンの不正購入疑惑、さらに保健省ロジシティック局がダヴァティ社に1回分につき1ドルの賄賂を要求したとの告発に続くものとなった。
動画の内容は、保健相は交渉にはタッチしないなどとするパズエロ氏の証言と矛盾しているが、同氏は、「保健省に出入りする会社の代表者に挨拶しただけ」として疑惑を否定。腸閉塞の治療を終えて18日に退院したばかりのボルソナロ大統領も、パズエロ氏を巡る新たな疑惑の存在を否定している。
CPIは今週から2週間の休暇に入っているが、主だったメンバーは、これまでに集まった証言内容を再分析するなどして、種々の調査を進めている。