ボルソナロ大統領は19日、15日に下院で可決された連邦予算基本法(LDO)案の中で、国民から批判の声があがっていた、選挙での政党支援金となる「特別キャンペーン財政特別基金」(フンドン)の57億レアルへの増額に拒否権を行使する意向を表明。20日にもそれを確認したが、中道勢力セントロンに考慮し、21年度の額の2倍となる40億レアルへの修正と、予想を下回る削減となりそうだ。20日付現地サイトが報じている。
22年度のフンドンは、「選挙年で資金が必要」との観点から増額が予想されていた。だが、21年度は20億レアルだったものが、3倍近い57億レアルになったことに対しては、「コロナ対策費が必要で1400万人の失業者がいる状況では不謹慎」との声が上がっていた。
LDOそのものは15日に上下両院でスピード可決されており、「金満選挙」に反対していたはずのボルソナロ大統領の前所属党・社会自由党(PSL)の議員らも賛成票を投じたことで、ネット上で批判を浴びた。それに対し、エドゥアルド・ボルソナロ下議らは、「フンドンに関しては否定した」と主張し、「大統領が拒否権を行使するはずだ」と語っていた。
腸閉塞の入院から職務復帰したボルソナロ大統領は19日、TVブラジルのインタビューに対して、フンドンには拒否権を行使することを宣言した。
「選挙に60億レアルなどばかげている。もし、その金がタルシジオ(・デ・フレイタス・インフラ相)にあったら、ポルト・ヴェーリョ〜マナウス間の高速道の工事が完成する」として批判した。
だが、ボルソナロ大統領が拒否権行使を宣言した後、21年の2倍の40億レアルという、周囲の予想を上回る額でまとめる方向で根回しをしているとの情報などが流れている。
これに関し、20日付メトロポレ紙が行ったインタビューに答えた下議の一人は、「拒否権行使後のフンドンの内容次第で、今後のセントロンの支持が決まる」とし、ボルソナロ氏が現政権を支えるセントロンに対する気兼ねで、拒否権行使をためらっているとの解釈を行っている。つまり、フンドンの額を削りすぎると、議会最大勢力のセントロンの支持を失い、連邦議会での立場が危うくなる上、政局調整も困難になるということだ。
現状で、ボルソナロ氏のセントロンへの依存度は高い。大統領は現在、上院のコロナ禍議会調査委員会(CPI)からの突き上げなどに悩んでおり、これまでに126通の罷免請求を受けている。
罷免請求の審理がはじまらないのは、ひとえに、セントロン最大党の進歩党(PP)のアルトゥール・リラ下院議長に助けてもらっているゆえだ。
だが、支持者たちの間では、「なぜ増額そのものに反対しないのだ」との不満の声が高まっている。ボルソナロ氏の支持者は金満選挙への不満からボルソナロ氏に投票した経緯がある。
下院のマルセロ・ラモス副議長(自由党・PL)も、ボルソナロ氏の今回の行為を「セントロンと妥協した根回し」とし、「フンドンの増額そのものを拒否すべきだ」と語っている。同副議長はボルソナロ氏から、LDO承認は副議長のせいと批判されていた。
ラモス副議長は19日、リラ議長に対し、6月30日に提出されたボルソナロ大統領に対する過去最大の罷免請求を含む126通の罷免請求の内容を閲覧する許可を求めた。これは、議会が休会となっている間に各罷免請求の根拠を再点検し、8月以降の扱い方を検討するためで、「(罷免請求は)審理の価値がある」とも語っている。