「ついにこのときが来たか」。進歩党(PP)党首、シロ・ノゲイラ氏がボルソナロ政権の官房長官に就任すると聞いてコラム子はそう思った。そして同時に、伯国政界で長きにわたって「暗部の一つ」とされていた問題の党が、とうとう白日の下(もと)に晒される。そうも思った。
思えばPPが政界の表に出てくることはなかった。それは、たとえば古い世代だと、同党が軍事政権時代の国家革新同盟(ARENA)を前身に持つ政党ゆえ抵抗のある人も少なくなく、一般人気が出にくかったのかもしれない。
ただ、同党が労働者党(PT)政権の協力政党になるなどして右派イメージを和らげ、ときも経過したことによって軍政のイメージがなくなり、「中堅政党」として生きながらえていた。そんなところだろうか。
ただ、同党には長らくの問題があった。それが「汚職」だ。民政復帰以降、同党のリーダーとして君臨していたのはパウロ・マルフ氏。聖州政界の首領だ。
70年代からサンパウロ市市長、サンパウロ州知事を長く歴任してきた同氏は「金はとるが、仕事はする」と揶揄されるほど「汚職の代名詞」的存在で、国際警察に指名手配され国外に出ることができないほどの人だった。それがゆえ、一部には高い人気は誇りつつも嫌う人も多かった。
そんな同党を象徴するのが2014年からのラヴァ・ジャット作戦だ。この作戦でPPは、捜査対象となった政治家をもっとも生んだ党になっている。だが、世間の関心がジウマ大統領やPTばかりに集まったために目立たずに済んだ。同党所属の政治家が捜査されようが知名度が低いため話題にならない。その中にはシロ・ノゲイラ氏本人も含まれている。
PTという隠れ蓑があり、さらに民主社会党(PSDB)が大統領候補だったアエシオ・ネーヴェス氏のスキャンダルでダメージを受け、民主運動(MDB)がエドゥアルド・クーニャ元下院議長の収賄での逮捕とテメル大統領の不人気で支持を落としたことで、PPは地すべり的に2018年選挙で下院第3党まで躍進した。
このころには中道勢力「セントロン」の名前も汚職政治のダーティなイメージで知られるようになっていたが、ここでも同勢力中心人物のクーニャ氏を隠れ蓑にして支持者を増やしていった。
そして今、PPはボルソナロ大統領にとっての拠り所とばかりに注目されるようになった。もう隠れ蓑はない。人々の注目が直接にノゲイラ氏らにあたるようになる。ボルソナロ氏とどういう政治を行うかにはもちろんだが、それまで大目に見られていた汚職に関してもマスコミがだまらなくなるだろう。
ボルソナロ氏にとってPPを「最後の切り札」と称すジャーナリストは少なくないが、PPにとってもこれは大きな賭けだろう。(陽)