選挙高裁(TSE)は2日、判事たちの満場一致で、選挙方式に関する虚報拡散についての捜査を行うこと、さらに最高裁に対し、ボルソナロ大統領がそれらの虚報拡散に関与していることに関する捜査を行うことを求めた。これらの捜査の結果次第で、ボルソナロ氏が22年の大統領選への出馬資格を失うこともあり得る。2、3日付現地紙、サイトが報じている。
TSEは2日午後、現職のルイス・ロベルト・バローゾ長官をはじめとする歴代の長官16人が、「ブラジルの選挙は安全」「1996年以来、電子投票で問題が生じたことはない」との異例の声明を発表したが、それだけに止まらなかった。
2週間の休廷が明けた2日、TSEはルイス・フェリペ・サロモン判事が提案した「選挙の正当性に対する攻撃についての捜査開始」に関する投票を行い、9人の判事が全員一致で捜査開始に賛成した。この捜査の対象には、「選挙方式に関する虚報拡散」や地位を利用した政治的、経済的な力の乱用、汚職なども含まれる。
さらに「ボルソナロ大統領が、実際には起こっていなかった過去の選挙方式での不正という虚報を拡散し続けていたことに対する捜査」開始を最高裁に求めることも、満場一致で決まった。
最高裁がこの件に関する捜査を行う場合は、2019年3月にはじまり、アレッシャンドレ・デ・モラエス判事が管轄しているフェイクニュース関連の捜査に含まれることになる。
今回の件はボルソナロ大統領が、2018年大統領選では一次投票で勝利していたはずと言い張ってきたことや、2014年の大統領選でアエシオ・ネーヴェス氏がジウマ氏に勝てなかったことに関して「不正があった」と証拠もなく主張し、それと引き換えに投票結果の印刷付電子投票(ヴォト・インプレッソ)を求めていたことに対するものだ。
さらに「印刷付き電子投票をしないなら、来年の選挙はない」と軍事クーデターを匂わす発言までしたことで、特に問題視されていた。
だが、大統領自身が「不正の決定的証拠を公表する」と宣言した7月29日に、自身のネット上での生放送で何も証明できなかったため、大統領への風当たりが一気に強まっていた。
仮に捜査が行われ、その行為に違法性が疑われた場合には、ボルソナロ氏は22年の大統領選に出馬する権利を失うことにもなりかねない。
バローゾTSE長官は、「選挙の実現を脅かすことは反民主主義的行為に他ならない」としている。だがボルソナロ大統領は3日、これらのTSEの判断に対し、「脅しには屈しない」と反発。ヴォト・インプレッソを求める次のデモを示唆する発言も行った。同趣旨のデモは1日にも行われたが、期待したほど人が集まらず不発に終わった。
ヴォト・インプレッソに関しては、TSE自身も2002年にテストを行っているが、その際は、選挙の透明性を増すような結果が得られず、かえって混乱を引き起こす結果しか出ていないと判断された。
また、導入にかかる費用も10年間で25億レアルと見積もられており、昨年9月にはTSEが満場一致で、ヴォト・インプレッソは違憲との判断を下している。ヴォト・インプレッソに関しては、下院でも反対勢力が圧倒的だ。
同投票方式に関しては軍が好意的な反応を示しており、7月8日にバルテル・ブラガ・ネット国防相がアルトゥール・リラ下院議長に圧力をかけた疑惑がある。2日には、三軍の退役将校らが参加する軍人クラブが、音声でも投票結果を確認できる印刷付電子投票導入に賛同する声明を出している。