地理統計院(IBGE)が7月30日、全国家庭サンプル調査(Pnad)継続版から算定した3~5月の失業率は14・6%、失業者は1480万人と発表と同日付現地サイトが報じた。
3~5月の失業率は2012年の統計開始以来最高だった2~4月の14・7%に次ぐ高さで、就労可能な労働者人口に占める就労者の割合は48・9%に止まった。就労可能な年齢層の就労者が半数以下という状態は昨年の3~5月から続いている。
IBGEによると、昨年3月から出始めた新型コロナのパンデミックの影響はかつてないほど大きく、失業者は1年間で210万人増えた。
それでも、3~5月には正規、非正規をあわせた就労者が77万2千人増えたが、その大半は自営業や個人・零細企業家達だ。同グループの就労者は昨年12月~2月比で3%増えたが、他のグループは軒並み減った。
この事は、自営業のように自分自身が責任を負う形の就労者は1年間で200万人増えたのに対し、労働手帳に登録された正規雇用者は1年間で130万人(4・2%)減った事でも明らかだ。ただし、民間企業に勤める正規雇用者は6・4%(58万6千人)増えた。他方、全国法人登録台帳の交付番号(CNPJ)を持つ雇用主は31万1千人減り、統計開始以来、最少となった。
3~5月の非正規雇用者は3470万人で、就労者全体の40%に達した。非正規雇用者は1年間で240万人増えた。ただし、19年12月~20年2月と比べると、340万人少ない。
仕事をしたいのに能力や技能に見合う仕事がない、希望する時間働けないなどで、能力や技能、経験が埋もれている労働者(trabalhador subutilizado)は1年間で260万人増えた。特に、希望時間以下の時間しか働いていない人(subocupacao)は27%増え、過去最高の736万人に達したという。
これらの数字は、ブラジルでは働きたい人や働く必要がある人が多いのに、働く場所が足りない事を示している。仕事がなくて仕事を探す事を諦めた人は570万人、家族の世話が必要などの理由で働けない人も510万人いるという。
IBGEのデータは労働市場がパンデミックの影響から抜け出せていない事を示しているが、パウロ・ゲデス労働相は7月30日、「IBGEは旧石器時代の遺物」として、データの信憑性などに疑問を呈した。
同相は全就労・失業者台帳(Caged)の数字を挙げながら、ブラジルでは3月だけで30万人以上、上半期なら150万人正規雇用が増えたと強調した。だが、市場関係者達は、Cagedは正規雇用しか扱っていないし、昨年1月からは契約書さえ交わせば季節労働者でも正規雇用として扱うなど、基準が変わり、対比する事自体、無理があると見ている。
現政権では、ボルソナロ大統領が国立宇宙研究所(INPE)やIBGEの出す数字を否定し、所長を解任するなど、自分達の意に介さない数字を出す公的機関への批判が繰り返されている。