ここ最近の4年間は気候変動のせいか、毎年、南米南部の物資輸送に欠く事が出来ぬ、人呼んで通称水路「パラグァイーパラナ河」の航行水位が異常な渇水状態に見舞われている。
世界有数の市場規模を誇る、ブラジル及び域外への輸送窓口である、ラプラタ河に繋がる輸送手段として、流域5カ国(ブラジル、アルゼンチン、パラグァイ、ボリビア、ウルグァイ)の輸出の3割を担っている同〝大水路〟の運輸機能に甚大な影響を及ぼしている。
しかして、その産業ロジスチック・チェーンが来す我が貿易収益性及び競争力に対するネガティブな打撃を、業界では正に憂いている昨今である。
その、我が国主要のパラグァイ及びパラナの2大河のかくも長期に亘る減水は、特に大豆と副産物類の大量輸出に少なからぬ害を来している。
例えば、去る4月より雨が無く、パラナ河のジャシレタ巴亜2国間企業水力発電所の貯水地閘門下流の航行は5月に有った僅かな降雨量で103艘のプッシュ・ボート群が漸く通過した様な状況で、その後、雨は再び全然お留守である。
なお、イタイプ巴伯2国間企業水力発電所の上流には、ブラジルの重要な凡そ30カ所の諸産業に電力を供給する水力発電所が存在し、目下の各河川の減水事情に鑑み、ブラジル連邦政府は同地域のエネルギー緊急事態を宣言した。
パラグァイ河の現状はここ数カ月間は多少の好転が見られ、油断は許されないが、現在は約7フィートの深度(吃水)を保っていて、それは凡そ荷船70%の積載量を意味し、航行に問題はないが、2倍の時間を余計に要する。
ただし場合によっては、更に3倍の時間がかかる時も有る。
それは、航路の減水に沿ってバージ連携船の吃水調整に荷積み加減を行なうからだ。
この事態は、ブラジル北部からの、大豆や副産物、コルンバの鉄鉱石、マルチニョの大豆や、パラグァイのコンセプション及びアルゼンチンのプエルト・ロサリオよりの米と大豆の輸送バージ連携船の上下航行に大きく影響している。
同じく、アスンション港から英国や亜国のロサリオ港等、幾多の海外諸港への、輸送・輸出の物流業界ロジスティックスを左右する。
他方、業界関係者の間では、来たる8月は気象台の予報に依ると、更にパラグァイとパラナの両大河の水位は乏しい降雨予想で、河船運航事情が甚だ厳しく続くと、大いに憂慮している。
なお、この事態は外洋船の運航にも大いに影響して居て、各当該外洋港での滞船事情が混乱を引き起こしている。
そのようにして水路「パラグァイーパラナ河」の異常渇水は、バージ連携船の積載量の60ー70%しか利用出来ず、必然的にパラグァイの貿易収益に不利を招いている。
なおこれ以外に、何時もアルゼンチンで起きて居る労働組合のストライキの迷惑も指摘すべきである。
これによる時間の空費に、コロナパンデミックの騒ぎも加わり、いたずらに荷積み中継港での作業遅滞も犯し、関連する燃料の輸入も滞り、事は重大性を重ねる。
この様に色んな問題を抱えて居る件の〝Hidrovia = 水路〟は、待望の「パラグアイ川浚渫機材整備計画」と称される英名=「The Project for Procrement of Dredging Equipment for Paraguay river」、及び西名「El Proyecto de Adquisición de los Equipos de Dragado para Río Paraguay」の円建て援助協定が存在する。
対象国はパラグァイで、協力金額は27億円〈約 2412万ドル相当〉で、2018年12月に日本の総理大臣としてパ国を初めて訪問した安倍晋三首相とマリオ・アブド・ベニテス大統領との間で締結され、2022年までの協力期間である。
同水路は、全長3440キロに及ぶ浚渫工事対象の大計画である。
(※写真はJICA「ODA見える化サイト」(https://www.jica.go.jp/oda/project/1760320/index.html)より。同事業詳細も同ページで)