ゲデス経済相が3日、「連邦政府には裁判所の命令で生じた支払い義務に応じる力がなく、分割払いを希望している」事を明らかにし、市場関係者らを不安に陥れたと3、4日付現地紙、サイトが報じた。
ゲデス氏が「払わねばならない事は知っているが、払うのは金ができた時」と表現したのは、裁判所が国に命じた、地方自治体や企業、個人に払わなければならない債務(precatórios)で、2022年は890億レアルとされている。
だが、連邦政府は、6万6千レアルまでの債務は全額支払うが、それ以上のものは10年間での分割払いなどを希望し、連邦議会にその旨を盛り込んだ憲法補足法案(PEC)を提出する意向だ。同法案では、6600万レアル未満の債務は10年以内の分割払い、それを超える場合は分割払いのルールは永続的とする見込みのようだ。
ゲデス氏は10年以内の分割払いはデフォルト(債務不履行)にはならないとの考えも示しており、45万レアル未満の債務は数年以内に一括で払うが、6万6千レアル以上の場合は原則的に「金ができたら払う」と発言した。
また、連邦議会に対して、州や市に対する裁判所命令の場合も支払額を歳入の1%までとするという基準を盛り込む事を求める意向も示した。
だが、来年の選挙を視野に入れたボルソナロ大統領が生活扶助見直しを求めている事や、財政改革などが遅れている事を知る市場関係者らは、ゲデス氏の発言はブラジルがデフォルトに陥る可能性を示唆するものと不安にかられている。このような事情で、3日の為替は前日比で0・53%のドル高レアル安に振れた。
経済省が準備した憲法補足法案は従来の支払い基準を変更するもので、ブラジル弁護士会(OAB)は、「選挙のためにデフォルトを制度化する試みだ」と批判した。
また、下院副議長のマルセロ・ラモス氏は、下院は同法案を拒否するだろうとの考えを明らかにした。アルトゥール・リマ下院議長は、ゲデス氏同様、10年間の分割払いはデフォルトには当たらないとしたが、裁判所命令によって生じた債務を全額払うのは困難である事は認めた。
裁判所命令による支払いは、過度の税金徴収や公務員の給与遅延などで生じる事が多い。国の場合、最低賃金60未満の小額の債務は60日以内に支払う必要があるが、それを超える金額で7月1日までに支払い命令が裁判所の官報に掲載されたものは、翌年の12月末日までに支払わなければならない。
裁判所命令による支払いは連邦政府の予算案にも組み込まれるが、細心の注意を払わないと、公共事業などに回す予算が削減される事態などを招きかねない。
専門家によると、社会統合基金(PIS)や社会保険融資納付金(Cofins)の算定基準から商品流通サービス税が除外された事で生じた訴訟で、裁判所命令による債務は増加傾向にあり、注意を要するという。来年の同種の債務額には、バイア州など7州に対する債務が166億レアル含まれている。