ブラジル日本商工会議所(村田俊典会頭)の異業種交流委員会主催の西森ルイス連邦下院議員による講演会「日伯経済・友好交流の展望―改めて教えましょう、ブラジルの魅力を!」が、7月30日午前10時からウェブ会議で開催された。西森議員は、ブラジルの政治がどのように経済に影響を与えているかを分かりやすく解説。「ブラジルの第一線で活躍する議員が、一世にも理解できる日本語で講演されたことも素晴らしかったです」と声が上がるほど西森議員は流暢な日本語で語り、約70人の参加者は予定の講演時間が過ぎるのを忘れて熱心に耳を傾けた。
最初に吉田伸弘委員長から西森氏の簡単なプロフィールが紹介された。パラナ州マリアルバ出身の西森氏は、2003年から現在までパラナ州議会議員を歴任し、2011年から3期当選で連邦下院議員(パラナ州自由党/PL-Partido Liberal)として活躍する。
パラナ日伯商工会議所理事、日本移民110周年記念式典会長(2018年)ほか、公式使節団による訪日では日伯経済外交使節団団長(2011~2019年実施)、大統領一行と大阪G-20サミット(2019年)にボルソナロ大統領に随行、伯日議員連盟会長としても日伯交流に尽くしてきた。
講演は、1898年にパリで締結された日伯修好通商条約を振り返ることから始まった。日本人移民は異文化や風土病の困難に直面しながら子弟を教育し、「大学に入りたければ日系人を一人殺せ」と言われるほど、各分野で活躍するようになり、日系社会の成長とともに日系人はブラジル社会で信頼を得てきた。親日家が多く、日本人に丁寧に応対してくれる点ではブラジルは世界有数の国であると力説した。
企業人にとって、ブラジルの魅力の一つは南米一のマーケット。特にブラジル人は貯蓄をしないため、市場はいつも活性化している。資源、エネルギー、そして「輝ける農業」も誇りだと力説。この半世紀でブラジルの農業は大発展を遂げ、40年前までは食料輸入国だったのが、セラード開発や農業技術改革により全土の約20%の耕地で、2、3倍の収穫量が得られるようになり、若い世代が農業に参入してきていると報告した。
西森氏は今年から来年にかけて、鶏肉やオレンジに続き、パラナ州から日本へ豚肉の輸出を本格的に売り込みたいと考えている。近年のブラジルは電気・電子機器製品を韓国から購入するようになったが、日本からの輸入も増やす必要があり、食品や酒類にも希望を託した。
日本への輸出品で大きなシェアを占めるコーヒーについては「コーヒー豆はブラジルから日本に輸出されていても、日本ではドイツやイタリア、ブレンドコーヒーの好評価が聞かれる。ブラジル産コーヒーをもっと宣伝する必要がある」との見解を示した。
現在、ブラジルの政界で日系人の連邦下院議員は、西森氏とキム・カタギリ氏の2人。日系人は「政治は汚い」と言って近づこうとしない人が多い。日系人と同様に少数派でありながら政治家が多いアラブコミュニティーを例に出し、「彼らは口も出すが、お金も出して票を集めている」と社会には政治が必要であることを強調し、もっと日系人が政治に関心を持つことを願った。
講演の後、「伯日議員連盟を土台に、西森氏にはいつか大統領になってほしい。西森氏が大統領になったら何を一番に変えたいですか」と参加者からの質問があり、「好意的なお言葉に感謝するとともに、皆さんの声を聴いてブラジルの発展に役立っていきたいです。私も日系人や親日派の大統領が誕生してほしいと思っています」と講演を締めくくった。
異業種交流委員会は本年度のテーマを「日系人社会をより深く知り、理解する」ことに定め、今後も定期的に興味深いイベントを企画する予定。