「始まる前は心配したが、いざ始まってみたら意外なほど盛り上がっている」。これはコラム子が感じた、東京五輪に関する日本人の反応ではない。同五輪に対するブラジル人たちの反応のことだ。
時差が12時間違うというのは、本来、五輪観戦にとってはもっとも辛いはずだ。ブラジルの通常の生活で見ることのできるのは、せいぜい日本での午前中の試合か、夜遅くなってからの試合だ。
それにもかかわらず、今回の東京五輪、SNS上などを見ても、かなり多くの人が夜更かしをしてテレビ観戦していることがわかる。しかもそれはサッカーに限ったことでなく、体操から、スケートボードから、セーリングやバレーまで、かなり幅広いスポーツを網羅しているから驚かされる。伯字サイトの五輪記事の独占も目立っている。
この盛り上がりの理由として考えられるのは、この五輪が「パンデミック以降に多くの人が同時に盛り上がれる最初の国際イベントだから」というのがあるだろう。
ブラジルの場合、ただでさえ自分の国のコロナの状況の方がひどいという考えがあるから、日本国内でコロナ悪化のリスクをめぐる国民の分断など気にせずに見ることもできている。そこも大きいだろう。
だが、それ以上に「ブラジル勢が想像以上に大活躍していること」。これこそがやはり最大の理由だ。開催国の常として、ブラジルは前回のリオ大会で金メダル7個、獲得総メダル数19と、過去最高を記録した。
その後、特に熱心なスポーツ振興が起こったとも、サッカー以外の別競技が国内の人気を得たとも思えない。東京五輪開始前に特に盛り上げを煽るようなこともなかった。
だが、いざはじまってみると、残り2日の現時点で金メダル獲得数は史上3位の4個。しかもまだ、男子サッカーをはじめ、現時点で少なくとも3個増える可能性もある。さらに現時点でのメダル獲得見込みも18個で、リオ大会に迫っている。
正直な話、ここまでやるとはコラム子でさえ思っていなかった。中南米の他の国はメダル獲得数5個を超えている国はないので、この地域ではダントツの強さだ。
そう考えると、やはりリオ五輪を開催したことはブラジルスポーツ界にはプラスだったのだと思う。あの大会を通じて、ブラジル人のスポーツの関心が多岐に広がり、それに選手たちも刺激された。このモチベーションの高まりは大きかったのだろう。
しかも今回の場合、柔道や男子体操、ビーチバレーなど、大きな期待がかかっていた種目が力を出し切れない中、新種目のスケートボードやサーフィンをはじめ、他の種目が補ってこの結果だ。スポーツの裾野の広がりはこうしたところにも感じる。
リオ五輪の直前には「開催能力がない」「国の金の無駄遣い」などと散々な言われ方をしたが、今大会ではその成果を実感できた。(陽)