ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》ヴォト・インプレッソを特別委員会が却下=3分の1も支持集まらず=大統領は脅迫発言で火の車=最高裁長官は激怒の声明

《ブラジル》ヴォト・インプレッソを特別委員会が却下=3分の1も支持集まらず=大統領は脅迫発言で火の車=最高裁長官は激怒の声明

5日の下院(Najara Araujo)

 5日、ボルソナロ大統領は、自身をフェイクニュース捜査の対象に加えた最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事に対し、「彼は終わる」との威嚇発言を行って最高裁を激怒させ、ルイス・フクス長官から異例の抗議を受けた。その夜は、大統領が来年の選挙への導入を強硬に主張する「投票結果の印刷付き電子投票(ヴォト・インプレッソ)」に関する法案が、下院特別委員会で3分の1の賛成も取れずに惨敗を喫した。6日付現地紙が報じている。
 モラエス判事が4日に選挙高裁(TSE)からの請求を受け入れ、「現行の電子投票で不正があった」と根拠なく主張し続けるボルソナロ氏をフェイクニュース捜査の対象としたことは、国内に衝撃を与えただけでなく、国際的なメディアでも一斉に報じられるほどの騒ぎに発展した。
 ボルソナロ大統領は翌5日、リオのFM局ラジオ93のインタビューでモラエス判事に対して「彼の時は終わる」との発言を行った。この発言は直後から「ミリシアのような物言いだ」などと評価され、政治家やネット上からの批判の声が即座に沸き起こった。
 大統領はこの前日の4日にも、ラジオ局のジョーヴェム・パンのインタビューで「私は犠牲者だ。私は嘘など言っていないのに捜査対象にされた」といった表現で迫害を受けたと主張し、「これは憲法の4行(範囲内)での行為なのか? いや、そうではない。ならばこちらもそうするまでだ」との挑発的な発言まで行っていた。

 これらの大統領発言に激怒した最高裁のルイス・フクス長官は5日午後、「TSEのバローゾ長官やモラエス判事に対して攻撃的な物言いを繰り返した」ことを理由として、予定されていた三権の長による会合を中止することを発表した。
 フクス長官は7月12日にボルソナロ氏と直接会談し、攻撃的な言動を控えるよう提言するなど、三権内の調整役を買って出ていた。だが、選挙関連のボルソナロ氏の声明のトーンが変わらず、ルイス・ロベルト・バローゾTSE長官への批判などが続いていることを受け、5日の最高裁での審理終了時に、7月に決めた三権の長による会議をキャンセルしたと報告した。
 ボルソナロ氏は同日夜のライブで、民主的かつ透明性のある選挙を保証するためにはヴォット・インプレッソが不可欠と主張した上で、三権の長による会議がキャンセルされたことにも言及し、「三権間での対話を保つことは必要だ」と語ったが、ボルソナロ氏の言動による関係悪化は諸方面から懸念されている。
 他方、ヴォト・インプレッソに関しては、5日夜、下院の特別委員会で選挙方法改正に関する憲法補足法案(PEC)への投票が行われたが、11対23の圧倒的な大差で投票方法改正法案は却下された。同法案に賛成票を投じたのは大統領三男のエドゥアルド下議やビア・キシス下議といった熱心な大統領派が所属する社会自由党(PSL)や、官房長官となったシロ・ノゲイラ氏が党首をつとめる進歩党(PP)、ブラジル労働党(PTB)、共和者(RP)、ポデモスの下議のみだった。報告官のフィリペ・バロス下議の提案にはTSEの権限を弱めることまで盛り込まれていた。
 アルトゥール・リラ下院議長(PP)は、特別委員会で否決されたにも関わらず、ヴォト・インプレッソに関する法案を下院の全体審議に持ち込む可能性を示唆した。だが、PECの承認には3分の2以上の賛成票を2度獲得する必要があり、現状では、来年の選挙に間に合うよう、10月初旬までに下院、上院双方での承認を得る可能性は極めて低い。