さてブラジルは今、冬期休暇の中、政治面では国会と政府コロナ対策の調査に上院に設置されたCPI(議会審問委員会)が7月末まで休会していても不透明性と要注意の度合いが高まり、経済金融面では休み明けを待って不安定に増減する事態になっている。
政治面では、ボルソナロ大統領とその政権の評価は最新の世論調査で悪化し、Datafolha調査結果によれば大部分が大統領を不誠実、偽装、不能、未熟、不断、権威的かつ知性不足と見るほどだ。70%は、ボルソナロ政権下に汚職が存在と思う。さらに2022年大統領選に関する同調査では、その決選投票でルーラ元大統領がボルソナロ大統領に優勢を58%対31%に拡大と報じられた。
そのような事態を前に、国会休会中に、政治的利害や利権によって右にも左にも結び付く中道の連合勢力、セントロンの大物、ノゲイラ上議(Ciro Nogueira‐PP)を官房長官として入閣させた。政党PPは国会での下院議長に加えて、官房長官も輩出して現政権内に存在を強く高めた。
経済金融面では、FGV調査によれば、自動車と情報機器、化学などを代表的に工業の55・5%以上が生産財不足の困難に直面している。また電力消費規制の高まる可能性を前に、各産業もメーカーも対策を急ぐ状況だ。さらにパンデミックは、ワクチン接種が拡大しても、デルタ株感染が世界中で進んで、ブラジルを含めて不安を喚起している。
《1》国内の主要なリスク
リスクの上で前月に比較して、大統領が改善よりも危機回避のために官房長官交代など部分的内閣改造に踏み切ったように不透明性が増して、政治リスクが悪化と言えるようだ。
そして経済リスクでは、ワクチン接種とともに死亡が減り、経済活動が活発化しているものの、コロナ禍はデルタ株が拡大して勢いをなお保持し、インフレ加速すなわち利上げ増加、電力消費規制の可能性も強まって、やはり悪化と言えよう。
7月30日に特徴的だったように、大統領が人気悪化を前に一段とポピュリズムな財政出動の懸念が強まっている。同時に、電力運営機関ONSが11月に電力資源全ての実質的に使い果たしと見る今でも、政府が電力危機を否定する姿勢を保持して、社会に節電への取り組みを義務付けていない事態に、専門家らが危機感を募らせている。
電力料金の値上げが進んだ他に、干ばつに加えて、例年以上の寒波が霜害などを引き起こして、生鮮食品の値上げが進みそうだ。インフレがさらに高くなる情勢から、中銀が利上げを強化すると見る向きが強まった。
しかし最大の懸念は、セントロンが国会と大統領官房を支配下に置いて財政出動を一段と強めて、財政健全化がさらに難しくなるというものだ。ゲデス経済相がボルソナロ大統領を抑えられず、大統領がセントロンを抑えられない、という見方だ。
《2》国外の主要なリスク
ワクチン接種拡大に連れて殊に欧米で観光産業が活性化するなど、世界全体の経済の回復がより鮮明になって、全般にリスク改善と言えよう。続いている高い国際商品相場がブラジルを含む新興諸国にも良い影響を及ぼし始めて、疑問と不安は今、米国のインフレ、繰り上げた利上げ開始のリスクだ。
デルタ株が世界中に感染を拡大して、今やパンデミックが再び経済再開を阻害する懸念が強まっている。米国でもワクチン接種の義務付け化に加えて、一部の地方政府が経済活動を制限する動きが現れて、雇用など勢い鈍化を示している。それでも多くの専門家は、なお経済活動の減速にまで至らないと楽観している。
米国でインフレが5月に13年間最大に加速したが、消費者物価のコアが6月に前年同月比3・5%上昇、観測(3・7%)以下を記録した。またGDP(国内総生産)も第2四半期に観測以下、6・5%成長を記録した。FRB(連邦準備理事会)が7月27日に金利と資産購入を保持することを決めて、安堵感を市場にもたらした。
《3》マクロ経済予測(7月30日付フォーカス)の軸は2021年から2022年に
2021年IPCA(インフレ)予測はすでに目標上限5・25%を遥かに越えて7%に迫り、金利予測も度々の上方修正を経て、すでに7%に達した。今年の景気予測の微調整もなお継続している。
7月30日付フォーカスはGDPが5・30%と鉱工業生産が6・38%の成長を示して、前回(7月2日付)のGDP(5・18%)と鉱工業生産(6・30%)より僅かに増加した。2022年向け観測は、GDPは2・10%のまま、鉱工業生産は2・25%から2・20%に逆に下げた。
他方、2021年IPCAは前回の6・07%から6・79%にさらに上昇した。2022年IPCAは3・77%から3・81%にやや上昇した。それに連れてSelic金利は今年末に6・5%から7・0%に、来年末向けに6・75%から7・0%にやはり上昇した。なお来年のIPCA予測は目標中心3・5%を上回っても上限5%に対しては余地をなお残すが、利上げ継続の必要性は明らかだ。
そして2021年末のドル相場はR$5・04からR$5・10に上方修正し、2022年末向けにRS5・20を保持した。ドル相場の観点で注意を強める指数は対外経常収支と貿易収支だが、2021年経常赤字(GDP比)が前回の0・41%から0・00%に減少し、貿易黒字が684億ドルから704億ドルに増加した。
《4》7月に2月以降最初の月計マイナスを記録した株式投資
平均株価指数(Ibovespa)が7月は最終日の急落(3・1%)で12万1801点に前月比3・94%下落した。
北半球が夏季休暇、ブラジルが冬期休暇に入って、金融取引は出来高が減少するため、例年に相場が不安定となりがちな時期だ。例えば証券取引高(B3)が6月のR$1,583,848百万から7月はR$1,236,592百万に21・9%減少した。そのうち4月から買い支えてきた外国投資家は、7月にR$8.250百万の出超になって、買いでのシェアを25・3%から23・4%に縮小した。それでも米国では、ダウ平均株価指数が7月23日に史上最高に到達した。
今、投資家が問う主要な疑問は、市場がデルタ株で不機嫌か、それとも接種で楽観か、という点だ。そして楽観がなお大勢を占めているようだ。ただし7月最終日に起きたように国内、特に財政リスクなど、他のリスクも少なからぬ増減を誘発することに変わりない。
《5》3月を頂点に下落してきた後、7月に反転したドル相場
ドル相場は経済金融面から基本的には軟調、R$5以下で推移しそうだったが、7月に入ってから政治リスク悪化が進んで逆に上昇して終えた。7月は平均値(Ptax)でR$5・1216に前月比2・39%、終値でR$5・2097に同4・76%上昇した。
7月の上昇には、政治リスク悪化の他に、国会が審議している所得税法改正案も寄与しているという。配当金課税が予定され、企業が課税回避の措置を講じているようだ。結果として、ドル売りの勢いが後退し、年末向け観測も僅かながら上方修正となった。
ヘッジへの世界的需要は7月に金とドル、さらにビットコインにもプラスに働いた。他方、確定利はインフレすなわち金利の上方修正で、マイナスだった。
いずれにしても外為収支が重要であり、7月に外国投資家は証券取引(B3)で出超だったが、貿易為替の27・4億ドルの黒字が金融為替の赤字19・1億ドルを8・3億ドル上回った。ドル相場は7月平均では0・45%増、ほぼ横這いだったことにも表れている。
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安全性を優先する私であり、Ibovespaが12万5千点を割った時点に株式資産買戻しを部分的に実施したが、大部分は7月を通じて現金のまま当座預金に保留した。それでも株式資産は6月に全部売却せず残した部分もあったため、Ibovespa下落で残高が減少した。外貨建て資産残高が増加して部分的に補充したものの、その結果、私の金融資産残高は7月に前月を下回った。
8月に入って、Ibovespaが12万5千以下に下落したが、株式運用の比重を拡大したいほどには積極的になれない。かといって国内で利上げの上方修正が進んで、ドル高に賭けるほど悲観的でもない。そして確定利は、インフレ(金利)観測が高止まりになり、下方修正に転じれば運用先になる。
なお見極めかねる状況なので、もう少し当座預金に留めて事態の推移を見守り、市場や観測の変化に応じて速やかに対応できるようにしておくことにする。