今週中に下院本会議での投票が予想される「投票結果の印刷付き電子投票(ヴォト・インプレッソ)」に関する憲法補足法案(PEC)の審議で、政府側の敗北が予想される中、同方式の強行採決を望んでいるボルソナロ大統領に、下院議長が結果を受け止めるよう促していると、9日付現地紙などが報じている。
ヴォト・インプレッソは5日に行われた特別委員会で、11―23の大差で否決され、却下の方向となった。だが6日、アウトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)が、週明けに全体審議にかける意向を示した。この決定は「委員会の意向を無視した非民主主義的なもの」として、下議の間で強い批判も飛び交っているが、同議長は、本会議で否決することで、同件の審議を打ち切る意向とされている。
下院での全体投票は10日に行われる見込みだが、同投票方式が下院で通過する可能性はほとんどないと見られている。
下院で通過するには308人以上の下議の賛成が必要となるが、現状の見込みだと、賛成票は150票程度だという。社会民主党(PSD)党首のジルベルト・カサビ党首は「200票に乗れば驚きだ」との見解を語っている。
リラ下院議長や官房長官に就任したシロ・ノグエラ氏が所属する進歩党(PP)でさえ、意見が分かれており、党の方針としては「個人の判断」とし、強制しない意向だという。
その背景には、選挙高裁(TSE)が6月から下院に対して行ったアルチクラソン(政局調整)の存在がある。TSEは下院に対し、2002年以降、通常の電子投票と並行してヴォト・インプレッソによる実験を行い続けているが、その結果、期待したほどの透明性のある成果を見ることができなかったとの報告を行い、各政党のリーダーたちを納得させていた。
仮に下院で承認を得ても、ロドリゴ・パシェコ上院議長(民主党・DEM)が上院での審議を行わないことを示唆していた。ヴォト・インプレッソを2022年に導入したい場合、10月初旬までに上下両院を3分の2以上の賛同を得て通過しなければならない。
こうしたことから、ヴォト・インプレッソが連邦議会で承認されることは絶望的な状況だ。下院で全体審議にかける判断を行ったものの、リラ議長自身が6日、連邦政府に対し、「黄色のボタンは押されたままだ」とし、下院での結果に従わない場合は、同議長が止めているボルソナロ大統領の罷免審議を実行に移しかねないことを仄めかしている。
アミルトン・モウロン副大統領も9日、「下院の全体投票で承認されなければそれまでだ」として、議会の意向を尊重する発言を行っている。
ボルソナロ氏は6日、サンタカタリーナ州ジョインビレで行われた企業家との会合でTSEのルイス・ロベルト・バローゾ長官を、「12歳の少女に性行為を認める人物」など根拠のない虚報で攻撃し続けた。だが9日、大統領はバイア州のラジオ局の取材に対し、「承認されなければバローゾ氏のせいだ」と敗北を覚悟したともとれる発言を行っている。