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《ブラジル》気候変動の影響深刻化=IPCCも加速化を指摘=少雨干ばつで農業被害も

伐採や火災、干ばつで苦しむ伯国の森(Mayke Toscano/Secom-MT)

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が9日、地球温暖化に関する第6次評価報告書を発表し、温暖化が加速している事を指摘。ブラジルや南米でも深刻な影響が出ており、迅速な対応が必要だが、連邦政府の足並みは揃っていないと9、10日付現地紙、サイトが報じた。
 報告書では、温暖化の原因は人類が排出した温室効果ガスである事や、産業革命前から1・5度以内の気温上昇というリミットは当初の予想よりも10年早い2030年代に到達する可能性がある事を指摘している。
 アントニオ・グテレス国連事務総長は、最新報告書は現状が逼迫している事を示す「赤信号」とし、21年以降は石炭火力発電所を建設しない事や、化石燃料の新たな探査や生産を終わらせ、再生可能エネルギーにシフトする事も求めた。
 地球温暖化によって南米で起こると指摘された影響は、ブラジル北東部での干ばつ長期化、ブラジル領アマゾン北部での少雨や極度に乾燥した日数と頻度の増加、アマゾンの気温が35度を超える日数が年間60日を超える(極端な時は150日超)、ブラジル領アマゾン南部とブラジル中西部の一部でのモンスーン体制の変化、ブラジル領アマゾン南部とブラジル中西部の一部での干ばつや乾燥、火災増加などだ。これらの変化は農業生産にも影響を及ぼす。
 中南米周辺では海面上昇も続き、低地での沿岸洪水や砂地での沿岸後退や、海の熱波も増える。南米北西部や南東部では降水量が増え、南米北部(ブラジル北東部)や南米南西部では降水量が減る。

 これらの点は影響の一部に過ぎないが、ブラジル北東部での干ばつや火災、ブラジル南東部での水害などは実際に頻発化しているし、昨年から今年にかけては、少雨、干ばつで作付を遅らせた農産物が早めに来た寒波で焼けるという農業被害も出た。
 エルニーニョやラニーニャといった海洋現象やそれによる少雨や大雨、南極からの強い寒気なども地球温暖化の影響の一部だ。今年はブラジルで水危機が深刻化しているし、最近は大西洋の海流がかつてないほど緩やかとの報道や、多数のペンギンが海岸に打ち上げられる事件も起きている。
 地球温暖化を招き得る活動には森林伐採や森林火災、化石燃料の使用などが含まれる。法定アマゾンでの伐採や火災の増加に国際社会が懸念を表明するのも、地球温暖化を促進させる上、アマゾンの熱帯雨林などが元に戻らなくなるターニングポイントが近いからだ。
 6日には国立宇宙研究所(Inpe)が、7月の法定アマゾンの森林伐採は、同月としてはここ5年間で2番目に多い1416平方キロで、昨年8月から今年7月までの森林伐採も、過去5年間で最多だった前年の9216平方キロに次ぐ8712平方キロと報告。環境団体などは「受け入れ難い数字」としている。
 また、焼畑禁止令が出ているにも関わらず、パンタナルでの火災が減らず、環境省が7日に抑制策強化の意向を表明した事も報じられている。
 今回の報告書発表後、環境省は、4月の気候変動サミットでの公約は長期的なものだから、報告書が出ても変更はないとしているが、農務省や農牧企業家らは報告書を深刻に受けとめ、早急な対応をと声を上げている。

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