1967年にブラジルに進出し、アマゾナス州マナウス市の経済特区(ZFM)でのテレビ製造でも40年の歴史を持つ日本企業のパナソニックが11日、今年末でテレビ製造を停止すると発表したと11、12日付現地紙、サイトが報じた。
テレビ事業からの撤退は6年前に起きたオランダのフィリップス社などにならうもので、専門家からも早かれ遅かれ起きる事と見られていた。だが、多くの小売店は驚きをもって受け止めたと報じられている。
同社によると、テレビやオーディオ部門からの撤退は世界的な生き残り戦略の一部で、米国やメキシコでも、テレビ事業からは撤退しているという。
ブラジルのパナソニックはテレビ以外の生産も手がけており、冷蔵庫などの白物家電や電子レンジ、車用の音響機器、病院やショッピングセンターなどの企業向け空調設備などの製造で知られている。最近は、男性用のバリカンといった個人向けのケア製品にも力を入れている。
多岐にわたる製品の製造は、韓国のSamsungやLGならびに中国企業の比重増で起きていたテレビ事業での減収を補って余りあり、同社の成長を支えてきた。
ブラジルでのテレビ部門の業績を見ると、2012年の収益の80%はテレビ事業から上がっていたが、現在は収益全体の8%に低下。ブラジルのテレビ市場でのシェアも、2011年の90%が現在は5~6%と大幅に低下しており、1~5月の販売台数は昨年同期比で1%減の460万台だった。2019~20年の年間販売台数も1290万台を下回っていたという。
これに対し、SamsungやLGは、様々なサイズのモデルを今年だけで40種売り出し、国内のシェアを拡大中だ。
他方、パナソニックはテレビの製造に不可欠なメモリーやプロセッサーを外部調達しており、韓国企業などとの間での競争力が殺がれていた。また、他の機器と接続して使う事もできるスマートテレビの開発でも、大幅な遅れをとっていた。
こういった事情と世界的な生き残り戦略が後押ししたのがテレビ事業からの撤退だ。マナウス経済特区で働くテレビ製造部門の従業員130人については、現段階では他部門への振り替えが困難として、解雇の方針が労組にも伝えられている。同社の従業員は全国に約2400人おり、テレビ部門の従業員は5%余りを占めている。
ただし、テレビ部門のサポート体制は維持されるし、テレビ事業以外の部門への投資や製造活動も継続する。マナウス経済特区の工場の場合、電子レンジや車用音響機器の他、ミナス州エストレマ市の工場で生産する洗濯機や冷蔵庫用の電子パネルの製造が続く。エストレマ市の工場では最近も120人が新規採用されている。
また、サンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポス市での電池の生産も従来通り、継続される。
なお、同社が撤退する事で生じる5~6%分の空白は10億レアル規模とされ、韓国と中国の企業による熾烈な争いが起きると見られている。