【既報関連】ボルソナロ大統領が最高裁の2判事に対する罷免請求を出そうとしていることに対し、州知事や上院、最高裁などがそれぞれに、大統領を牽制する動きを見せている。17日付現地紙が報じている。
ボルソナロ大統領が14日にアレッシャンドレ・デ・モラエス判事とルイス・ロベルト・バローゾ判事の罷免を求めると発言したことは、政界にも強い波紋を投げかけている。
16日、全国13州の知事と連邦直轄区の知事たちは連名で最高裁への支持を宣言した。
この声明は、このところ、最高裁や判事たちが絶え間なく威嚇や攻撃に遭い、民主主義や司法の独立性が脅かされているとの危機意識から起こったものだ。とりわけそれは、大統領が選挙法の改正を迫り、証拠が証明もされていない「過去の選挙不正」なるフェイクニュースを拡散するなどして、選挙高裁長官を兼ねるバローゾ判事を攻撃するという形で激化していた。
この声明は名前こそ明示しなかったが、このところのボルソナロ氏による一連の行動を批判したものだ。その中では「最高裁への攻撃が起こった場合、州は警察派遣の準備をさせることもある」と記されるなど、厳しい内容が目立っている。
声明に署名した知事は、ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事やエドゥアルド・レイテ・リオ・グランデ・ド・スル州知事(ともに民主社会党・PSDB)、フラヴィオ・ジノ・マラニョン州知事(ブラジル社会党・PSB)など、以前からボルソナロ氏との対立が伝えられる知事たちが中心で、より深く対立している北東部では、ほとんどの知事が名を連ねた。
一方、最高裁判事の罷免を管轄する上院のロドリゴ・パシェコ議長(民主党・DEM)は16日、ボルソナロ氏の名前こそ出さなかったものの、「愛国者というのは国を分断するものでなく、ひとつにまとめるものだ」と語り、大統領を皮肉った。こうした発言からも、最高裁2判事への罷免請求を進める可能性は低いとみられている。
上院では大統領を牽制するように、最高裁新判事候補のアンドレ・メンドンサ氏に対する口頭試問(サバチーナ)の実施を保留することを決めている。メンドンサ氏は7月13日にボルソナロ大統領から最高裁の新判事候補としての指名を受けたが、パシェコ議長や憲政委員会のダヴィ・アルコルンブレ委員長からは今日に至るまで、向こう数カ月間の予定にサバチーナを入れる気配がなかった。今回の大統領発言で、この動きはさらに長びきそうだ。
メンドンサ氏は上院での受けが悪く、最高裁判事承認に必要な上院全体投票の過半数(41票)を得られない可能性が高い。
一方、連邦検察庁のアウグスト・アラス長官は16日に、ボルソナロ氏が繰り返してきた選挙システムに対する攻撃についての予備捜査を行うことを決めた。これは、「選挙不正の証拠を示す」と宣言し、公的機関が既に反証した虚偽のニュースや噂を使って実証しようとしたが、できなかった7月29日の生放送後に起きた、大統領に対する告発を受けたもの。
最高裁のカルメン・ルシア判事から、大統領に対する捜査開始の是非について24時間以内に見解を述べよとの命令を出された末の措置だ。カルメン判事は8月のはじめに意見書の提出を求めていたが、アラス氏は2週間も、その要請をないがしろにしていた。