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「日系社会は最も近い外国」大戦中のタブーを描いた映画『オキナワサントス』松林監督に一問一答

ブラジル近代史に残る日本移民迫害事件を初めて描いたドキュメンタリー映画『オキナワ サントス』の松林要樹監督(沖縄県在住)に、メールで一問一答のインタビューを行った。国内で上映中だ(https://okinawa-santos.jp/)。
 第2次世界大戦の真っ只中の1943年7月8日に、サンパウロ州サントス港湾部在住の日本移民6500人(大半が沖縄系移民)、ドイツ移民数百家族が24時間以内の強制立退きを命じられた。このことは、ブラジル一般社会はもとより、日系社会においても知らない人が多い。まして世界でも日本でも知られていない。
 そんなタブーを映画化する試みをどうして始めたのか? 本人に尋ねてみた。
(1)サントス強制立ち退きに関して、すでにNHKで番組を放送していますが、その反応はどんなものでしたか? どんな反応があったか。

松林要樹監督

松林要樹監督


【松林監督】2019年12月の英語版放送直後にブラジル側からの反応がありました。主に、退去事件自体を知らなかったということでした。
 2019年12月にはBS-1スペシャルで放送され日本語版のDVDは、2020年の1月上旬にブラジル到着しています。それで映画に深くかかった県人会の人たちが見たということです。
 番組や映画になることをあまり前提として取材をすすめていない状態で撮影に協力してもらっていたので、関係者からは非常にありがたいという反応に溢れました。
(2)今回の映画を通して一番、日本の日本人に訴えたかったことは、どんなことですか?
【松林監督】日本の中で日本人だけでいると、自分たちが置かれている状況があまり見えてこないし、分からないと思います。ヘイトスピーチなどをやっている人たちにとっても、ひとたび時代や場所を変えただけでそのヘイトの対象になるという構造を見せたかったです。
(3)ブラジルの沖縄県人、沖縄県系人は、日本にとってどのような存在、どんな価値があると思いますか?
【松林監督】世界中の日系社会は、今の日本社会から非常に遠い存在となっています。
 ただし、ひとたび南米のサンパウロなど大きな都市に足を運んだら、日系人の存在の大きさに気が付くと思います。その中で沖縄県系移民の活躍は群を抜いている気がします。
 日本社会では人口比率で言えば1パーセント強のマイノリティだった沖縄県の存在が、南米などの日系社会では、その中心的な役割をやっているということに驚きます。
 その日系社会が日本社会にとって最も近い外国の入り口となることが期待されていますが、1980年代から続くデカセギを経ても残念ながらあまりその交流が進んでいる感じがありません。
(4)サントス強制立ち退き事件を題材にしようと思ったきっかけは何ですか? 取材の上で一番、苦労したのはどのような点でしたか? 
【松林監督】ニッケイ新聞の深沢さんのおかげで取材をはじめました。取材の過程で名簿が見つかり、その名簿の約6割が沖縄からの移民だとわかり、その資料をもって沖縄県人会の移民研究塾と連絡が始まった時から取材は思うように進み始めました。
 ただ、劇中でも紹介していますが、日系社会に今だにのこる沖縄と大和の軋轢に頭を悩ませました。
(5)この作品は今後、ブラジルで見ることはできますか?
【松林監督】実は、4月に行われた南米最大のドキュメンタリー映画祭でe tudo verdadeで無料放映されていました。ですが、その期間中にアクセスできた人が少なかったようで、あまり反応がありませんでした。コロナが落ち着いて、上映会などを検討したいと思っています。