これまでボルソナロ大統領寄りの判断を行うとの批判にさらされてきたアウグスト・アラス検察庁長官が、フォーリャ紙の取材で胸中を語り、ボルソナロ大統領の意思に反して、従来通りの選挙投票方式を支持する意見を述べた。同長官はアンドレ・メンドンサ氏が不承認となった場合の最高裁判事の代役候補の座も諦めていないと言われている。19日付現地紙が報じている。
アラス長官が現状でとっている態度は、18日にアレッサンドロ・ヴィエイラ上議(シダダニア)とファビアーノ・コンタラート(レデ)が、同長官を「ボルソナロ大統領に関する捜査への見解表明を避け、黙認している」として最高裁に訴えられたことで、改めて問題視されはじめている。上議らは、アラス氏の不正行為を調査するようにとの要請書を連邦検察庁高等審議会に送るよう、最高裁に求めている。
同長官はボルソナロ大統領の指名で2019年に長官となって以来、ボルソナロ大統領に関する数々の捜査を、「犯罪性なしとして取り上げようとしない」と批判されてきた。その態度には、最高裁の一部からも反感が起きている。
最近も、3日に要請した意見書の提出が行われないことに痺れを切らせたカルメン・ルシア判事が、16日に「ボルソナロ大統領が選挙の不正を根拠なく主張し、選挙高裁を攻撃し続けていることに関する見解を24時間以内に示せ」と命令したことで、ようやく「予備捜査を行う」と返答を行う事態が起きていた。
アラス氏は18日、最高裁への訴えが行われた直後にフォーリャ紙の取材を受け、心中を吐露した。
アラス氏は自身の行動について、「職務上の立場や法規が分かっていない人は色々と批判をする。検察は法規にのっとって行動すべきであり、政治的であってはならないのだ」との表現で、自身の置かれた立場を説明し、「大統領の行動を黙認している訳ではない」とも主張した。
アラス長官は、ボルソナロ大統領が熱望した「印刷付き投票」(ヴォト・インプレッソ)に関して、大統領と意見を異にしていることも示した。
同長官は、選挙の有効性を審議する必要があるすべての場に臨席しており、不正がなかったとの認証も行ってきたとし、現行システムで不正は起きていないという選挙高等裁判所のルイス・ロベルト・バローゾ長官の見解を支持した。さらに、「検察庁でも選挙高裁でも、これまで不正は確認していない」と主張した。
だが、アラス氏が「大統領黙認」との疑惑はなおもささやかれ続けている。G1サイトの政治コラムニストの記事によると、アラス長官は上院での次の任期の口頭試問(サバチーナ)での批判を避けるため、大統領に不利な捜査依頼を、ボルソナロ派として知られている副長官のリンドーラ・アラウージョ副長官に丸投げしているという。リンドーラ副長官はマスク着用を無視したボルソナロ氏に対して、マスクの有効性には疑問があり、「犯罪性なし」との態度をとったりしており、検察協会からも問題視されている。
アラス長官はまだ、最高裁判事候補のアンドレ・メンドンサ氏が上院から承認されなかった場合に代役候補になることへの期待を捨てていないとされており、そのこともあって、大統領に不利になる判断を避けている可能性があると指摘されている。