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《ブラジル》フォーリャ紙「市場はボルソナロ離れ」エコノミストらが酷評=国際経済不透明の中で支出急増=投票を巡る言動にも拒絶反応

19日のボルソナロ大統領(Isac Nobrega)

 2022年に懸念される経済の逆風と、それに逆行する連邦政府の財政支出増大により、市場がボルソナロ政権を見限りはじめたと、20日付フォーリャ紙が報じている。
 今週に入り、国際市場でブラジルに対する逆風が吹き始めている。13日までのサンパウロ証券取引所(B3)の指数(Ibovespa)は今年の累積で1・83%プラスを記録していたが、16~19日には3・32%の下落を記録し、19日現在では今年の累積で1・56%の下落に急転した。同指数は20日も11時19分現在で0・51%下落し、11万6564ポイントとなった。
 18日にはドルが0・87%上がって5・4220レアルを記録。この時点で今週に入って3・4%、今年に入って4・5%の上昇を記録した。20日は11時19分現在で、1ドル=5・4480レアルとなっている。
 このような動きが浮上した原因は国内事情だけではなく、米国と中国のコロナ禍からの経済回復が思うようにいかないという観測が出始めたことが影響している。とりわけ米国では、7月の小売売上が振るわなかったことや失業率の推移などが問題となり、連邦準備制度(FRS)に利上げの可能性が生まれている。もし、実際に利上げということになれば、ブラジルのような新興国は外資引き上げなどで大きなダメージを受けると予想される。
 このように先行きが不透明な状況では緊縮財政が望まれるが、ボルソナロ政権は逆行し、支出を増やす一方となっている。こうした状況をエコノミストのゼイナ・ラティフ氏は「2018年にボルソナロ氏に求められた財政再建の期待感は消えている」と評している。

 2022年は選挙年ということもあり、ただでさえ支出増が避けにくいが、そこに大統領が自身のイメージアップを狙うべく、ボルサ・ファミリアを「アウシリオ・ブラジル」と改めた新しいものに変えようとしている。これにより支出増のみならず、インフレへの懸念も高まっている。
 MBアソシアードスのエコノミスト、セルジオ・ヴァーレ氏によると、こうしたことに加え、ボルソナロ氏が「印刷付き電子投票」(ヴォト・インプレッソ)にこだわるあまりに選挙高裁を攻撃するなどして民主主義を脅かしたことが経済政策の実施を困難にした上、ブラジルの印象を悪化させ、投資家たちの関心や交渉能力を失わせたという。このままでは為替の悪化や、それに伴うインフレや利上げの懸念が高まるばかりだし、国外からの投資も減るという。
 政情の不透明感や財政危機への懸念は、パウロ・ゲデス経済相が進めようとした財政改革や行政改革が暗礁に乗り上げ、思うように進まないという状況も生み出している。アルトゥール・リラ下院議長が主導する下院での審議の進め方も問題で、現在審議中の税制改革に関しても「市場の評価は最悪だ」とヴァーレ氏は分析している。
 ヴァーレ氏はボルソナロ氏に対し「今のままでいけば、ジウマ政権よりも壊滅的な終わり方をする可能性も否定できない」と厳しい評価を下している。
 同氏は22年大統領選に関しても、世論調査ではルーラ元大統領がリードしているが、ボルソナロ氏に愛想をつかせた人が全員、ルーラ氏に乗り換える訳ではないとし、「市場はボルソナロ氏でもルーラ氏でもない、第3の選択肢を求めている」と分析している。

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