連邦警察は現在、選挙高裁(TSE)をはじめ、大統領による司法や議会への口撃の背後に、米国のトランプ前大統領の戦略参謀だったスティーブ・バノン氏の関与を疑い、捜査を進めている。25日付現地紙などが報じている。
バノン氏は国際的な虚報サイトとして目されるようになったサイト「ブライトバート」を運営し、2016年の米国大統領選ではトランプ氏の選挙参謀として活躍。17年1〜8月にはトランプ氏の大統領上級顧問を務めたが、仲違いで辞任。その後は、右翼ポピュリズムの国際的な台頭を促すための活動を行っている。
ブラジルでは現在、ボルソナロ大統領が、過去の国内の選挙において確認されてもいない不正疑惑を理由にあげて、TSEによる現行の電子投票擁護を批判。軍事行進まで行わせて連邦議会を威嚇したものの、下院で大統領が提唱した「印刷付き電子投票(ヴォト・インプレッソ)」が却下されたことで、大統領と司法や議会との間の緊張感が高まった状態が続いている。
連邦警察は18日、ボルソナロ大統領の行っているこのやり方が、2016年の米大統領選の際にトランプ氏が行った手口ときわめて似ているということを最高裁に報告している。それによると、トランプ、ボルソナロ両氏は共に「メディアを攻撃し、投票制度への不信感を高める虚報を拡散している」と結論づけている。連警はその行為に、大統領の3人の息子たちやカルラ・ザンベッリ下議、ビア・キシス下議が同じ方法で追随していることを問題視している。
バノン氏の関与が疑われはじめたのは12日、大統領三男のエドゥアルド下議が米国サウスダコタ州に赴き、フェイクニュース拡散で有名な企業家のマイク・リンデル氏の講演会に参加したことだ。エドゥアルド氏は、バノン氏の指導を受け、講演会で40分間ほど話した。エドゥアルド氏はこのとき、ボルソナロ氏が繰り返し語っている「電子投票は信用できない」というメッセージを語っている。
バノン氏とエドゥアルド氏の関係は、2018年のブラジル大統領選の前まで遡る。エドゥアルド氏は当時からバノン氏との接触を喜んで、SNSを通じて公表しており、以来、同氏はバノン氏のブラジルの窓口役として見られてもいた。
バノン氏はこの講演会で、エドゥアルド氏のスピーチを要約するかのように「大統領選での不正は米国だけのことではない」「来年のブラジル大統領選は世界で2番目、南米では最も大事な選挙だ。ルーラ氏を倒すべきだ」とした上で、「選挙はボルソナロ氏が勝利する。電子投票による不正がない限りは」と、ボウソナロ氏がこのところ繰り返している言葉をあえて使っている。
連邦警察は最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事が管轄している「デジタル・ミリシア(ネット犯罪者)」捜査において、国内の極右系のネットのインフルエンサー(影響力のある人)がどの程度、バノン氏の影響を受けているか、資金提供などが行われていないかを調べる可能性がある。
投票方法への根拠のない批判とそれに伴うTSEや最高裁批判同様、2018年のブラジル大統領選の際に起こったボルソナロ氏支持者が行った大量の虚報拡散に関しても、TSEが本格的に動く可能性が出てきている。
★2020年8月22日《ブラジル》米国極右大物バノン氏逮捕=大統領や三男と深い関係=前回選挙時から虚報戦略に影響?
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★2019年3月19日《ブラジル記者コラム》ブレグジット/トランプ/ボルソナロに裏の繋がり?