ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》上院議長がモラエス判事罷免請求を却下「民主主義の退化につながる」大統領は議長に恨み節=なおも続く最高裁との対立

《ブラジル》上院議長がモラエス判事罷免請求を却下「民主主義の退化につながる」大統領は議長に恨み節=なおも続く最高裁との対立

パシェコ議長(Marcelo Camargo)

 ロドリゴ・パシェコ上院議長(民主党・DEM)は25日、ボルソナロ大統領が20日に提出した最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事に対する罷免請求を却下する判断を行った。25、26日付現地紙、サイトが報じている。
 モラエス判事に対する罷免請求は、熱心な大統領支持者であるブラジル労働党党首のロベルト・ジェフェルソン氏が、最高裁を銃で威嚇する動画を拡散するなど13の罪状で逮捕されたことに端を発している。大統領はジェフェルソン氏のほかにも、自身の息子たちを含む多くの支持者たちがモラエス判事の管轄する「デジタル・ミリシア(ネット犯罪者)」捜査の対象となっていることに腹を立てていた。
 やはり大統領支持派の大御所セルタネージャ歌手のセルジオ・レイス(84)とオトニ・デ・パウラ下議(キリスト教社会党・PSC)らが20日に家宅捜査を受け、大統領を激怒させたが、この捜査も「デジタル・ミリシア(ネット犯罪者)」捜査の一環だった。
 最高裁判事が罷免されるためには上院で審議されないとならないが、審議にかける以前にパシェコ議長が却下することになった。
 パシェコ議長は今回の罷免に関する声明で、「最高裁判事の罷免を行うためには明確な罪状を示す証拠の提出も含め、法的な手続きをしっかりとらなくてはならない」とした上で、上院の法務担当者に精査させた結果、罷免に相当する罪状は認められず、「この罷免請求を受け付ける事は民主主義にとっての脅威になりかねないと判断した」としている。

 また同議長は「判事の行った判断に対して批判をすることは、表現の自由の範囲内である」としながらも、「だが、その判断で職を追われることはあってはならない」との判断を行った。そして「民主主義が退化することは認められない」と言い切っている。
 このパシェコ議長による決定の数時間後、ボルソナロ大統領は、「ブラジルに癌がある限り、我々は戦わなければならない」と主張する動画の拡散を行った。これは4月に自身がネットの生放送で行った発言だった。
 大統領はさらにその翌日の26日、ペルナンブッコ州のラジオ局に出演した際、モラエス判事の罷免請求却下に触れ、「残念だ」と答え「(ルイス・ロベルト・)バローゾ判事が上院でコロナ禍の議会調査委員会(CPI)の命令を出した際、パシェコ氏はすぐに従った。私のときとは随分の違いだった」と皮肉った。
 パシェコ議長は同CPIに関し、上議たちが開設を求める署名を提出した際は難色を示したが、バローゾ判事の命令が下ったことで開設に動いた経緯があった。
 また、この放送の中でボルソナロ氏は、最高裁が現在審理にとりかかっている、新保護区制定を困難にする法案と関連した先住民保護区内の土地の所有権を巡る闘争に関して、「先住民保護区を含む地域の開発が認められないのならば、農業は終りだ」として最高裁を挑発している。
 最高裁とボルソナロ大統領の対立状態は、モラエス判事に対する罷免請求提出前後から続いている。25日にはエジソン・ファキン判事が、大統領の出した「最高裁が連邦検察庁の許可なしに捜査命令を出せることへの見直し」に対する請求をお蔵入りさせている。