ブラジル中西部や南東部、南部では、91年ぶりの少雨で干ばつも進んでいるが、ブラジルに水源地があるパラグアイ川の水位低下で、パラグアイなどの貿易にも支障が出ていると8月27日付アジェンシア・ブラジルなどが報じた。
パラグアイ川は水運の要所で、ブラジルに端を発し、パラグアイ領内を通った後、アルゼンチン北部でパラナ川と合流する。同川を航行する船は、パラグアイの首都アスンシオン市付近で穀物その他の産品を積み込むが、例年にない少雨のために水位が下がり、船に積み込める荷物は通常の半分程度になっているという。パラグアイは世界4位の大豆の輸出国で、水運が使えない事の影響は大きい。
パラグアイ川の水位低下が水運にも影響する状態は3年ほど前から起きているが、現在の状態は少なくとも2022年まで継続する見込みだという。
パラグアイ川で起きている水位低下による水運上の問題は、アルゼンチンでも当然起きており、同国産の穀物の輸出などにも影響を与えている。
油を採るのに使う種子や穀物の輸出に携わる業者が集まるパラグアイの商工会議所会頭のセーザル・フレ氏によると、「非常に厳しく、デリケートな状況が続いている。運行を停止している貨物船も多く、ラプラタ川まで産品を運ぶ際の経費や時間に相当な影響が出ている」という。
セーザル氏は「年内はまだ、工業用や国外への輸出用の大豆の在庫があるが、新しく収穫した分は、水位が回復して船の航行が正常化するまで、サイロに保管しておかなければならない」とも語っている。
他方、川や海の水運を担当する貨物船船主達のためのセンター理事のフアン・カルロス・ムニョス氏は、乾季だとラブラタ川までの水運に要する時間は3倍になるとした上、「何もかも遅れている。パラグアイの貿易は96%が水運頼りだから、国の経済に与える影響も大きい」と語った。水運の停滞は、農作物などの輸出だけでなく、肥料の輸入、運送にも影響を与えており、9月から始まる大豆の作付けにも影響するという。
また、パラグアイ川はブラジルやボリビアからの農産物の輸出にも使われているため、水運停滞の影響は広範囲に及ぶ。
ブラジル国内での少雨はブラジル国内での森林伐採や森林火災がもたらす影響のひとつと見られている。だが一連の出来事は、ブラジル国内の少雨や干ばつがブラジル国内での水や電力の供給、農業生産用の灌漑用水確保、水運に影響を及ぼすだけでなく、隣国での水運や貿易にも影響を及ぼす事を如実に語っている。