ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》工業連盟が連邦政府難色で声明延期=「三権の協調を強く求む」に産業界は賛同=大統領の非民主的行為を牽制

《ブラジル》工業連盟が連邦政府難色で声明延期=「三権の協調を強く求む」に産業界は賛同=大統領の非民主的行為を牽制

パウロ・スカッフィ会長(Antonio Cruz)

 サンパウロ州工業連盟(Fiesp)が7日の独立記念日を前に、「三権の強調」を求める声明をとりまとめて発表しようと試みたが、連邦政府や連邦議会などの反発にあい、発表を延期した。同連盟が出そうとしていた声明には銀行や農業その他の産業団体も署名を行っており、ボルソナロ大統領の名前は明記されていないが、民主主義を脅かす大統領をけん制するための政治色の強いものとの声が上がったりして、発表が延期された。8月31日付現地紙が報じている。
 Fiespの声明は8月31日に発表される予定だった。だが、連邦政府内に強い懸念が起きたことや、アルトゥール・リラ下院議長がFiespのパウロ・スカッフィ会長と話し合いを行った結果、「延期」という形で発表が止められた。
 スカッフィ会長は「声明を書き加えてから発表する」とのことだが、発表は独立記念日後となりそうだ。
 延期になった背景には、この声明が8月28日の時点で出回っていたことがある。その声明には、「司法、立法、行政の三権が協調すること」が強く求められており、200以上にも及ぶ大企業や業界団体が署名を行っていた。
 連邦政府が問題視したのは、署名の中にブラジル銀行協会連盟(Febraban)が含まれていたことだ。公的銀行である連邦貯蓄銀行(CAIXA)とブラジル銀行は、現政権を批判する内容を含むなら各銀行が署名するべきで、連盟として署名するならばFebrabanから脱退するとほのめかした。

 現政権や現在の経済政策に対する批判ととったパウロ・ゲデス経済相は8月30日、「『Febraban内の何者かが連邦政府を攻撃する内容に書き換えた』と聞いた」と強い不満を表明した。
 だが、ゲデス経済相の声明に対し、Febrabanは「我々はこの声明の作成そのものには関与していない」と返答し、同連盟が産業界にこの声明を呼びかけたのではないと主張した。
 だがFebrabanは同時に、この声明への署名を取り消さないことを明言し、三権の協調を求める姿勢を崩さなかった。
 一方、この声明にも署名していたブラジル農業ビジネス協会(Abag)は、Fiespが発表を延期したのを受け、8月30日に同様の内容の声明を独自に発表した。
 同協会のマルセロ・ブリット会長は、「Fiespは発表を延期したが、我々は自分たちだけでも発表する方がよいと考えた。意思表示は共和国精神の一部だ」と語っている。
 事の発端は、ボルソナロ大統領が来年の選挙で導入を求めた「印刷つき電子投票」(ヴォト・インプレッソ)が選挙高裁に強く反対された末に下院で却下されたこと、最高裁管轄の「デジタル・ミリシア(ネット犯罪者)捜査」で、熱心な支持者がネット内外の過激な言動で逮捕されたことなどに業を煮やした大統領が、支持者たちに独立記念日での抗議活動を呼びかけたことだった。
 だが賛同者に警察官や軍人が多く存在していることなどもあり、国民の間に恐怖が広まり反感を買っていた。三権の間で生じた軋みは、株式市場や為替、国際的なイメージにも影響を与えており、金融、産業など全部門の懸念事項となっている。